利用者負担の説明、ケアマネージャーに義務化か

財務省の介護への口出しが止まらない。下記の件にしてもそうだし、要介護2までは軽度者だから訪問介護の生活援助の給付をカットしろだの、財務省が提案すべきようなことではない。はっきり「財務省として介護費はここまでしか出せない。この予算の中であとはそちらでなんとかしてくれ」、と言ったほうがすっきりする。財務省が介護保険サービスの、しかもケアマネージャーの細かい業務内容に、さもしったかぶりな顔して意見を言ってくるのは越権行為だろう。厚生労働省はいったい財務省に何を言わせているのか。

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複数事業所の利用者負担の説明、ケアマネに義務化を 財務省が注文
https://report.joint-kaigo.com/article-11/pg562.html
利用者にとってのサービス価格の透明性をもっと高めていくべきではないか―。そう必要性を訴えている。
財務省は23日の審議会(財政制度等審議会・財政制度分科会)で、今後の介護保険制度の見直しに向けて具体策を提案した。

居宅介護支援にも言及。ケアプランを作るプロセスで、複数の事業所のサービス内容と利用者負担の違いについて説明することをケアマネジャーに義務付けるべきだと主張した。
利用者が比較検討できる機会を必ず得られるようにすることが狙い。事業所どうしの競争がより活発になることでメリットが生じると見込んでいる。来月にもまとめる政府への提言に盛り込む方針だ。

介護サービスは安く提供されるべきものなのか

介護サービス費がすべて各事業所が勝手に設定できる自由価格なら、上のような意見についても貸す耳はある。でも、サービス価格(介護報酬)は国が決めた公定価格である。公定価格より安く提供することはできるが、高くすることはできない。

そのため、各種の加算(オプション費)で基本報酬に上乗せできるようにしている。加算の中には運動機能向上加算とか、口腔機能向上加算といったものがあるが、要はADLを維持して要介護度を重度化しないためのものだ。要介護度が上がると介護費が上がるため、それを抑制する目的である。

さらに言えば、基本の介護報酬を上げたくないための加算でもある。各企業は努力して加算をとり、従業員の給料に反映させているのが現状なのだ。この点については医療も同じ仕組みだし、介護においても事業所同士の競争=低価格という考えは成り立たない。

医療にしろ介護にしろ、利用すれば便利だけれど、利用しなくても我慢して生活できる、という性格のものではないのだから。

介護サービス事業所を選ぶ基準

介護サービス事業所は公定価格である基本報酬を安くするとは考えられない。となると、安いところとなると、けっきょく加算をとっていない事業所を探すことになる。僕はそれが正しいことだとは思えない。

加算の有無は利用者の状態、希望、経済状況など、さまざまな側面を総合的にケアマネージャーがアセスメント(情報分析)して、最適な事業所を決めている。利用者の状態的に必要なければ加算をとっていない事業所にするし、必要であれば加算をとっている事業所を選ぶ。

僕はそうしていたし、僕が知る限りにおいて、他のケアマネージャーもそうしていた。料金面だけをみてサービス事業者を提案しているわけではないのだ。

都心部ではデイサービス事業所や訪問介護事業所はたくさんあるため、利用者が利用でき範囲すべての事業所の料金、サービス内容について説明することは現実的ではない。利用者側にしたところでそんな七面倒臭いことは望んでいないと思う。

となると、現実的には事業者の数をしぼって料金、サービス内容の説明をすることになる。すると、ケアマネの主観で絞り込んだ事業者を利用者に提案して説明することになる。そこには客観的な公平性はない。この利用者にはあそこの事業所が相性が合うな、と考えて選ぶことも多い。相性が合うかどうかを決めるのはケアマネの主観というか、経験上の勘である。

ケアマネの勘で事業所選定をするのは公正・中立ではない、と言われるなら、利用者が自分の力で事業所を選んでもらうしかない。でもそんなことができるならケアマネがいらないわけで、専門職であるケアマネージャーが利用者に最も良いと思われる事業所を選んで提案するわけである。
医者が診断して、患者にとってもっとも良いと思われる治療方法を選ぶのと同じだ。

それなら、財務省は医者にも複数の医療機関の治療内容と料金負担の違いについて説明することを義務付けるべきだろう。医師会がそんな意見に耳を貸さないことを知っているので、財務省はそんな提案をしないだけである。

説明をわざわざ「義務化」する必然性はない

ケアマネージャーはケアプランを作成しても、そこで終わりではない。その後もモニタリングしてケアプランに沿ったサービスが提供されているかをチェックする。もしサービス内容や料金面で利用者の意向に合わないなら、別のサービス事業者を選定することになる。ケアマネージャーの仕事はその繰り返しであって、最初に選んだサービス事業者でずっと行くわけではない。

こんなことはすでに多くのケアマネージャーが自然に行っていることだ。だから財務省が言ってきていることをわざわざ義務化することはない。義務化によって生じる書類を新たに増やす必然性はもっとない。

介護サービス情報公表制度はどうなったのか

介護事業者のサービス情報公表制度というものがある。厚生労働省管轄のこのサイトには各事業者のサービスの特徴や加算状況などがばっちり掲載されている。でもこんなお金のかかるものを作ったわりには、これを利用している利用者などほぼ皆無である。

僕は実務者研修(旧ホームヘルパー研修)の講師の仕事もしているのだが、そのテキストの中にもはっきり「情報公表制度は利用されていない」と書かれていた。

テキストにここまで書かれるくらいだから、利用者でこの制度を利用している人はほとんどいないはずだ。利用者はそもそも知らないし、わざわざインターネットを使って検索できる人もいない。

一応すでにあるものが活用されていないにもかかわらず、新たに事業所選定のための説明をケアマネージャーに義務化し、それを守らないケアマネ事業所は報酬減産にするというおどしをかける行政には怒りを通り越してあきれてしまう。

ケアマネは別に行政からの委託を受けて仕事をしているわけではない。ケアマネばかりに行政の下請け的な仕事をさせるのはお門違いだ。

ケアマネ業務は措置に戻せば?

前々から思っていたことだが、ケアマネージャーの仕事はもう行政が行えばいいのではないだろうか。ケアマネの居宅介護支援は市町村の管理・運営にし、民間会社に委託に出す形に変更すべきである。でもこうすると、けっきょく昔の「在宅介護支援センター」に戻るわけですな。

ケアプラン作成の公平性をここまで押すのであれば、行政の責任にするしかない。なんだか将来的には本当にそうなりそうな気がするのだけれど。

要支援も要介護もケアプランは行政が管理する形にし、オランダやスウェーデンのように要介護認定の時に、利用できるサービス量とサービス種も決定してしまう。一ヶ月に利用できるサービス量はすでに要介護度によって決まっているが、サービス種においても今のようなケアマネージャーの個人的な裁量によって決定されることがないように縛るわけである。
もうこれでいいじゃないか、となかばヤケになって思わないでもない。

たぶんこれからも財務省は介護サービスの内容にしったかぶりな顔していちゃもんをつけてくるだろう。お金を稼いでいるのが夫でも、お金を管理している(財布を握っている)のが妻なら、妻のほうが偉いのである。

介護保険はいっそのこと、厚生労働省の管轄からはずして、財務省介護保険課とすればよいのかもしれない、なと思う今日このごろである。

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