介護事業所の大規模化で介護職の転職問題は解決されるか その1

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僕の大学の同期に、10歳年上の友人がいる。彼(男だ)は、28歳の時に福祉大学に入学してきたちょっと変わった人である。彼はいわゆるオープニングスタッフ大好き人間で、施設で数年働きながら、新規開設する介護施設を見つけると、そこに転職してしまうクセがある。

いや、クセというよりそれはほとんどビョーキとも言える。オープニングスタッフという言葉は、彼にとって猫にまたたびなのだ

介護職は一緒に働く人間が嫌になるから職場を辞める

僕が思うに、彼は人間関係を一定以上の距離から進ませたないのだろうと思う。オープニングスタッフ同士には上下関係がない。次から入職してくるスタッフはみんな後輩。彼は人当たりがいい。でも人間関係で線をひいたら、その線から中には決して他人を踏み込ませない。それで自分のまわりに一定の距離を置く人間関係が作りやすいのだろう。

かといって、一番の古株として権威を持つことも嫌う。何か組織の中で責任を負わされる立場になることを性格的に嫌う人である。施設が開設して数年もたてば、最初のスタッフも辞めていくし、新しいスタッフがはいってくる。人間関係はごちゃごちゃになってくる。そしてそれが嫌になって、彼はまた次のオープニングスタッフの口を探していく。僕はこのように想像している。

僕も約10年の間に4回も転職したクチだし、今までの付き合いから彼の性格もだいたい分かるから、たぶん合っていると思う。

彼の転職の方法は少し極端だ。それは認める。でも友人の贔屓目で言うわけじゃないけれど、彼は良い介護職である。利用者に怒ったこともないし、他の職員が夜勤を病欠で休みたいと言えば(夜勤にあたってるときははってでもこい、と僕は言いたい)、とつぜん夜勤にシフト替えされても文句一つ言わない。それなのに自分は病欠で休んだことはほとんどない。

介護職がその職場を辞める理由の第一に低賃金とか待遇が悪いとかあがるが、あれは嘘である。もちろん低賃金を理由に辞める人もいるだろうが、一番の理由は人間関係だ。これの問題は、良い介護職は辞めていき、どうしようもない介護職は辞めない現実がある。

「今よりももっと良い介護をしたい・しなければ」と思う人は燃え尽きて辞めていく。逆に「今のままでいいじゃん、オムツしている人をなんでトイレに連れていかんとあかんの?めんどくさいわ」と思う人がそのまま居残るわけだ。我慢して働き続けるには給料が安すぎるという事実も付け加えて置かなければいけない。主客が逆なのである。

給料が安いから辞めるのではなくて、こんな職場で働き続けられるか!と思って辞めるのだ。結局それって同じじゃないの?との声が聞こえそうだけれど、そんなことはない。安い給料でも人間関係が良ければ辞めない現場がちゃんとあるからだ。職員が定着して、はじめてケアの改善ができるのだ。

今の現場はケアの改善が必要なのに、職員の定着率があまりに低すぎて、それどころじゃない、というところが多いと思う。

この現状を変えていくのは、施設内部の力ではもう限界にきていると僕は思う。よいサービス(ケアをサービスというのは少し抵抗があるが)を作るためには、お客さん側の反応が必要なのだ。

施設という外からは目に見えないブラックボックスの中で、中の人達ばかりであーだ、こーだといっても正直、埒があかないのである。利用者にとって何をケア目標におけばいいか?これは残りの寿命をどう生きていってもらうか?を考えることなのだ。

これを赤の他人だけで進めてしまっていいのだろうか、と僕はいつも思っていた。施設の中の介護とはつまり生活そのものである。老人にとって残り少ない人生(生活)であるのは、厳然とした事実なのだ。いくら介護で手がかかる状態になっているとはいえ、家族と過ごし、一場面を共に過ごす、ということをしなければいけない。
そうしなければ、老人ホームは現代の姥捨て山以外の何物でもない。

正直に言うと、僕も自分の肉親の介護はしたくない。手がかかるのが目に見えて分かっているからだ。介護が面白いと言えるのは、契約の元に行う仕事だからだ。肉親との間に介護契約は結んでいない。

僕は家族の手だけで介護しろ、と言っているわけではない。そんなことは物理的に不可能である。しかし、介護を他人まかせ(とくに施設まかせ)にすることはもうやめなければいけないと考える。介護施設とは家族にとっては実に便利な装置だ。特に何も言わなくても、向こうから言ってきてくれるし、どんどん事を進めてくれる(ついでに要介護度も進む)。施設のシステムにクチを出せば、自分の負担が増えることが分かっているから、我慢して言わないようにする。そうして、どんどん施設のケアが腐っていく。

施設に預けていても、例えば冠婚葬祭の折々には家族、親戚の一員として参加してもらう。そのためには、参加できる心身状態にしておかなければいけない。だから日々のケアがどうなっていて、どうあるべきかを把握しておくのは家族の役割だ。

入所して、実際に介護を受けているのは高齢者だが、彼らはケアの改善要望や苦情があっても、訴えられないのだから。

でもこの話をしても、あんまり賛同がえられないんだよねぇ。はたして間違っているのは僕のほうなのだろうか?

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