次の介護保険改定で変わる特養の要点まとめ

来年度の介護報酬が決まった。0.54%のプラス改定。プラスになるのは9年ぶりらしい。9年ぶりだって。前回のマイナス改定はけっこうひどかった。今回は医療の診療報酬とのダブル改定でもあり、注目度が高かった。ちなみに診療報酬の方は、本体部分が0.55%のプラス改定。財務省が散々「マイナスにしろ」と連呼していたわりには一応プラスになったわけだ。でもそのかわりに薬価報酬が下がった。

また介護保険の方では、デイサービスの報酬単価が実質マイナスになるだろうと予測されている。なぜマイナスになるかというのは今回はスルーする(また詳細がわかったら記事にしたいと思います)。
訪問介護も生活支援の単価を否応なく下げられるはずだから、プラス改定になったからと手放しで良かったとはとても言えない。そもそもたった0.54%のプラスなんだから言えたもんじゃない。しかしデイサービスと訪問介護への報酬削減攻撃はすごいですね。

その他で個人的に注目したいのが、特養の介護体制にけっこう変更点があったこと。今回の改定ではとにかく「リハビリテーション」が重視されている。この場合のリハビリテーションは、「機能向上訓練」のことである。本来「リハビリテーション」というのは機能向上訓練にとどまらないもっと広い概念を持つ言葉だ。でも国は機能向上、つまりADL向上の意味でしか使っていない。このADL重視の考えが在宅サービスだけでなく、入所サービスである特養にも波及した。変更箇所がけっこう多いので、気になった所だけをかいつまんで見ていきます。

目次
・介護報酬はプラス改定だけれど、実質は?
・次期改定で変わる特養の要点いろいろ
・排泄介護についての評価と外泊時の介護サービス提供の新設
・リハビリ(機能向上)強化で特養がまるで老健に

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介護報酬はプラス改定だけれど、実質は?

デイサービス単体で事業展開しているところは少ないと思うが、もしそういう法人なら今回の改定は手痛い打撃になると思う。またデイ、訪問介護、ショート、入所施設などを複数抱えている法人にしたところで介護報酬のマイナス部門をかかえるわけだから、総合すると実質的にプラス報酬になるのか疑問だ。

だから名目上でプラス改定になったといっても、現場の人間への給料アップに結びつく可能性は低い。国もそこらへんはちゃんとわかっている。だから介護職員処遇改善加算の拡充を考えたり、またその他に「勤続10年以上の介護福祉士に8万円を支給する」、という離れワザを持ってきた。これはすでに閣議決定されていて、2019年10月から支給が開始される。すごいことを考えるなぁと単純に感心してしまった。

特養などの入所施設は報酬アップになるとは思うのだが(単価がいくらになるかまだ出ていない)、処遇改善加算とこの8万円支給があるため、微妙なところだ。本体部分の報酬は実質マイナスになる可能性もある。そう考える根拠は、改定のたびに「収入を増やしたければ各種加算をとれ」、というスタンスがどんどん強まっているからだ。

現状の加算ありきの収入アップシステムのままでは経営は厳しいままだと思う。加算をとりたくても肝心の人材が定着しないのだから、ケアの充実に繋がらない。といって加算を取得しないと経営が厳しいとなれば、経営者はなんとか加算をとろうとするだろう。すると、とうぜん現場の職員にいっそうの負担がかかる。書類が増えるし、もちろん具体的なケア量も増える。
法人の経営者や現場の介護リーダーが優秀、職員がチームとしてまとまっていて、日頃のケアがしっかりしている事業所なら、多少の負担増で済むかもしれない。でも離職率が高い、つまり大半の介護施設に良い影響を与えるはずがない。

次期改定で特養のこんなところが変わる

ケアマネタイムスの記事から改定内容を引用しつつ、僕の意見を書いていきたいと思う。引用先はすべて以下。

ケアマネタイムス【まとめ】特養、どう変わる? http://www.care-mane.com/member/news/8946?btn_id=ranking-view&CID=&TCD=0&CP=1

夜間の医療処置への対応の強化
「夜勤職員配置加算」について、現行の要件に加えて、夜勤時間帯を通じて、「看護職員、または認定特定行為業務従事者を配置していること」について、これをより評価することとする。

「夜勤職員配置加算」とは、夜勤帯に配置する最低限の介護・看護職員の数に1人以上を追加して配置することで取れる加算のことだ。特養の夜勤には、ふつう看護師は入らない。少なくともそんな贅沢なことをしている特養を僕は聞いたことが無い。だからたぶん看護師より、「認定特定行為業務従事者」の配置で加算をとることになるのだろう。

いったい誰が「認定特定行為業務従事者」なんて難しい言葉を考えたんだろうと思うのだけれど、これは簡単に言うと喀痰吸引ができる介護職員のことである(正確には胃ろう処置も含む)。研修自体はそんなに難しいものではない。また最近の介護福祉士は養成課程で喀痰吸引も学ぶので、すでに従事者の資格がある。
この研修を職員に実施している施設は多いから、加算は取りやすいだろう。まあ加算が取れるからといって、喀痰吸引が必要な利用者を積極的に入居させる特養が増えるわけではない。やはりリスクが高い利用者は取りたくないのが本音だから。

個別機能訓練加算の見直し
自立支援・重度化防止に資する介護を推進するため、外部のリハ職と連携する場合の評価を創設する。
具体的には、
●訪問・通所リハを実施している事業所、またはリハを実施している医療機関(原則200床未満)のPT、OT、ST、医師が特養を訪問し、特養の職員と協働でアセスメントを行い、個別機能訓練計画を作成すること。
●機能訓練指導員、看護職員、介護職員、生活相談員、その他の職種が協働して、その計画に基づき、計画的に機能訓練を実施すること。

僕が勤めていた法人では、週1回外部から理学療法士を呼び、特養の入居者にリハビリをしていた。他の特養で同じようなことをしていたかは知らないのだが、今回の改定でリハビリ職の介入が後押しされる形になったわけだ。

でも個別機能訓練計画書まで作成するなら、特養と介護老人保健施設の違いなんてなくなるんじゃないの?と思った。まあ専門のリハビリ職が特養に入ることを否定はしない。問題はリハビリの内容である。病院と同じ内容のリハビリ、つまり急性期患者相手のリハビリなんかしても要介護のお年寄り相手に効果なんて出ない。そこらへんのことをちゃんと分かってリハビリするならいいのだけれど。まさか関節可動域訓練やマッサージだけして報酬をもらうわけではない、ですよね?

機能訓練指導員の確保の促進
機能訓練指導員の確保を促進し、利用者の心身の機能の維持を促進する観点から、機能訓練指導員の対象資格(PT、OT、ST、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師)に6ヵ月の実務経験を持つはり師・きゅう師を追加する。個別機能訓練加算における機能訓練指導員の要件についても、同様の対応を行う。

これも機能向上を重視する一つ。在宅のケアマネをしていたときに、はり・きゅう師の訪問マッサージを受けている高齢者にときどき出会った。というか、「訪問マッサージをしますよ」、というチラシ自体は色んな所で見た記憶がある。あれは一定の条件を満たせば健康保険が使えて、けっこうお得なのである。一定の条件とは、歩行困難などで施術所までいけない人、それと施術に医師の同意があること。

僕はこのはり・きゅう師の訪問マッサージのことはよく知らない。だから間違っていたら悪いが、けっこう儲かる商売じゃないかと思っていた。チラシを見ていると、そんな雰囲気をプンプン感じた。それが国のお墨付きで特養にも訪問できるようになるわけだ。

まあお年寄りの視点でみるとマッサージを受けたい人が多いので別にいいのだけれど。筋肉をほぐしてあげて、精神的にもリラックスさせてあげることは良いことだ。でもなぜはり・きゅう師を機能訓練指導員に追加したのか(できるのか)が分からない。彼らに機能訓練ができるとはとうてい思えないのだけれど。

排泄介護の評価システムと外泊時の介護サービス提供の創設

上にあげた以外にも他に改定項目があるのだが、僕が特に注目したいのは以下の2つである。

排泄に介護を要する利用者への支援に対する評価の創設
排泄に介護を要する入所者に対し、多職種が協働して支援計画を作成し、その計画に基づき支援した場合の新たな評価を設ける。

今回の文章では取り上げなかったが、栄養管理に関しても新しく評価システムが取り入れられた。だから排泄介護の評価システムだけが特別というわけではないのだが、僕としてはこの評価システムの創設を歓迎したい。僕は排泄介護をとても重視している。それは次の外泊時の介護にも非常に深く関係している。

外泊時に在宅サービスを利用したときの費用の取扱い
入所者に居宅における外泊を認め、その入所者が、特養により提供される在宅サービスを利用した場合は、1ヵ月に6日を限度として、所定単位数に代えて1日につき一定の単位数を算定できるようにする。ただし、外泊の初日・最終日は算定できないこととする。

特養に入所しているくらいだから、重度の介護が必要な人である。そんな人を一泊だけでも家族が面倒をみるのはけっこう大変である。外泊初日はこの制度が利用できない(これは初日から利用できるようにしてほしい)。それでも家に泊まらせるからには、それなりの理由があるはずだ。例えばお盆や正月、そして冠婚葬祭のときなどが外泊する機会になるのではないかと思う。

要介護度が低い人ならわざわざヘルパーを頼まなくても家族で対応できる。ヘルパーを頼む必要がある場合はとうぜん重度の介護が必要な人である。でも重度の介護が必要な人でも、食事はけっこう食べられるものだし、一泊程度なら入浴の必要もない。でも排泄だけは必ず介助の機会が発生する。そして排泄介助するときには必ず移乗介助がセットになる。

排泄がオムツ対応になっていると、交換のたびにベッドに一度移乗させる必要がある。紙パンツの人でも、トイレに行き、便器に乗り移る必要がある。僕が移乗介助と排泄介助を重視するのはこのためである。また認知症がある人の場合、尿意・便意を直接的な言葉で訴えられないことがある。
加えて外泊すると、いつもと環境が変わってしまう。中にはせっかく自宅に帰ったのに、逆に不穏になってしまう人がいるかもしれない。だから認知症の理解が必要だし、適切な関わり方をしないと、せっかくの外泊がお年寄りにとっても家族にとっても地獄の一丁目、なんてことになりかねない。

僕は施設ケアの質をあげるためには、利用者を家族のもとに一時的に還す=外泊(外出)させる必要があると考えている。だから外泊時に在宅介護サービスとして保険が適用できるのはよいことだと思う。施設側にしても、お盆や正月はパートの介護職が休みをとるから人手が足りなくなる。
その時期に入居者がたとえ1人でも外出・外泊してくれていると、業務量が減って楽になる。でも本当に外泊を勧めていきたいなら、家族に移乗と排泄の介助技術、そして認知症についての理解を促していく必要がある。僕はそれが今後の施設介護の重要な仕事の一部になると信じているのだけれど。

リハビリ(機能向上訓練)重視で特養がまるで老健に

特養に入居しているお年寄りが問題なく外泊するためには、施設が正しいケアをしているかにかかっている。トイレに座れる人は少なくとも日中はオムツにしない。本人の動きをさまたげない、残っている力をしっかり引き出す適切な方法で移乗介助を行う。お年寄りごとに認知症のクセをしっかり理解し、対応する。そしてそういったケアをしていることを担当者会議の場でもなんでもいいから、しっかり家族に伝える。ケアの目標を家族と共有しておく。これがプロの介護であると思う。

まあそれはそれとして、今回の特養のケア内容の改定を見ていると、あまりにもADL向上ばかりに力を入れすぎているように思う。リハビリ職を入れて機能訓練計画を作成しろなど、特養を老健にしたいのか?と言いたくなる。まあ老健にしたところで入所期限付きの特養みたいな所も多いのだが。

本人の心身能力を正確にアセスメントし、適切な介助方法をとることは介護のプロとしては当然だ。そのためにリハビリ職と協力することは良いことだと思う。必要性も感じる。しかし、特養に入居しているのは要介護度が3を超えるような重度者ばかりである。そんなお年寄りに病院で行うのと同じ機能訓練をしても、効果なんて出ない。リハ職を雇い、計画書を作成し、モニタリングし、といった一連の作業のコストを考えると、とてもじゃないが費用対効果は低いと僕は思う。そんなことは現場の人間はよくわかっていると思う。
だから加算のためのケアをするのか、質の高いケアをしているから加算がとれるのか、そこらへんを間違えないようにしないといけないですね。

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