『いざという時の介護施設選びQ&A』 三好春樹著

図書館で無造作に選んできた介護施設選びの本をご紹介。今回は「いざという時の介護施設選びQ&A」である。発行日が2015年4月なので情報が新しい。そのためとくに訂正するところはなかった。
この本は在宅介護応援ブックというシリーズの中の一冊。他には「介護の基本Q&A」、「認知症ケアQ&A」が刊行されている。


著者の三好春樹氏は特養の介護職から理学療法士の資格をとり、介護現場に「新しい介護」を提案しながら全国をセミナーで飛び回っている。著書も多い。介護職ならどれも必読である。介護職に、介護家族の両方におすすめできるのは「完全図解 新しい介護 全面改訂版」だ。大きく、重く、値段も高いがこれ一冊あれば介護の勉強はこと足りると僕は思う。ちなみに介護施設にもこの本が置かれているところがあるけれど、介護職員が読んでいるところは見たことがない。もったいない。

この本のなかで紹介されている介護施設は、家族が知っておくべきものがすべて網羅されている。専門職ならもっとつっこんだ知識が必要になるが、この本の対象は家族である。ちょうどよい情報量だと思う。少しとっつきにくい単語があるが、これは著者のせいではない。介護保険制度が猫の目のように変わるせいである。次々と新しい言葉が出てくる。困ったものである。情報はぎゅっと凝縮されているが、Q&Aになっていて、イラストもふんだんに掲載されているので、すぐに読めると思う。

特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホーム、小規模多機能、有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅などの概要と施設を選ぶときのポイントも掲載されている。また、施設で提供される食事、排泄、入浴介護それぞれのチェックポイントもあわせて勉強してもらうとよいと思う。

在宅介護応援ブックの一冊なので、デイサービスやショートステイについても触れている。利用方法や利用時の注意点などが書かれており、いたれりつくせりである。すぐれた内容の本だが、唯一問題がある。この本のチェックリスト通りに施設を選ぶと、ほとんどの施設が落第するという点だ。

僕がここは読んでほしいと思うところを一部引用する。

136ページ 「コラム③入所施設を「在宅化」してしまおう」
好きなものをおいしく食べる、トイレで排泄する、家庭の風呂に入ってリラックスする、つまり、それまでの在宅での生活をできるだけ継続することが「入所」にあたっての最大の課題です。あなたが選んだ施設はそれに協力してくれますか?家族の役割は施設職員と共に、「施設の在宅化」を実現することです。


介護施設に入居するととうぜん生活環境がガラッと変わる。認知症の人はもちろんだが、認知症がない高齢者にとっても負担が大きい。介護を受ける高齢者にとって、生活の構成は食べる、排泄する、入浴するが基本になる。この基本をいかに「普通」に近づけるか、ということが施設には問われている。

171ページ 「後始末ではない排泄ケアを」
本人が主張できる間はいいのですが、認知症や老衰になるとそれも困難です。相談者の場合、そういうときに子どもに登場してもらいましょう。「母は(父は)、意識がある間はオムツにしてほしくないと言っていました。トイレで排泄する介護を要求します」と告げてもらうのです。場合によっては、施設を移してもらいましょう。在宅介護をしなくても、施設に本人の思いを伝えるだけで、子どもは立派な主介護者になります。

178ページ 「流れ作業でない入浴介助を」
機械浴に頼っている施設の多くは、分業による流れ作業のような入浴介助を行っています。ストレッチャーで居室から脱衣所まで運んでくる人、服を脱がせる人、体を洗う人、服を着せる人と、役割が分担されているのです。これでは、入浴ケアと呼べません。お年寄りが入浴を楽しめないだけでなく、入浴介助をしている介護職も楽しくないはずです。ふつうの生活とかけ離れた入浴法を行うことは、認知症のお年寄りを「不穏」へと追い込む原因になります。
介護施設を選ぶのであれば、ふつうのお風呂に1対1で入れてくれるところを選びたいものです。

家族ができることは本人の代弁者になることだ。また何度もいうようだが、施設の介護でこだわるところは「食事」、「排泄」、「入浴」の3つである。長期化している現代介護の状況では、家族が介護サービス(在宅サービス、施設サービス)を利用せずに介護を乗り切るのは難しい。在宅介護の場合は介護サービスを利用してできるだけ介護から離れることが重要だし、施設介護の場合は介護サービスを利用しつつ、できるだけ介護に近づくことが重要になる。

家族が施設介護に近づくための方法論はまだ確立されていないと思う。いつもは施設、ときどき在宅という形(意識)がもっと広がれば、施設介護も変わっていくと僕は考えているのだけれど。

そのためには介護の専門職側の努力も必要だし、家族側の努力も必要になる。本書はその入門書として考えてもすぐれた本だと思う。地域包括支援センターや居宅介護事業所に置いて家族へ貸出しをしてもいいと思うけれど、どうでしょう。ぜひご一読を。

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