広がる介護業界内の賃金格差。相談員・ケアマネ軽視はいつまで続く?

自民党の圧勝で終わった今回の選挙。気になるのは介護業界への影響についてだけれど、関係者の大方のみかたでは悲観的な意見が多いようだ。まあそうだろうな、と僕も思う。財務省はあいもかわらず給付費の抑制を強く求めているし、次の選挙まで時間があくので、政府は思い切ったことができる。もはや後の祭りである。医療・介護報酬のダブル改定の結果はもう決まったといえるかもしれない。

そんな中、安倍首相は介護職の賃上げについては改善すると言う。たぶんその言葉通りに介護職だけは賃上げされるだろう。介護報酬は下がると思うが、介護職の給与だけは守られるはずだ。なぜなら介護職には処遇改善加算があるからだ。

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介護職員処遇改善加算とは

介護職員処遇改善加算(以下、処遇改善加算)とは、その名前の通り介護職の処遇(つまり待遇)を改善させるためにサービス利用者から徴収するお金のこと。徴収したお金は介護職に還元される。そう、還元されるのは介護職のみである。支給対象者は、パートや非常勤、派遣、登録ヘルパーといったすべての介護職だ。

介護職は仕事の内容に比して給料がよくない。そのため待遇を改善してあげましょう、という理由でこの処遇改善加算ができたわけだが、介護に携わっているのは何も介護職だけではない。生活相談員、ケアマネージャーをはじめ、事務員、栄養士などもスタッフである。国は彼らの待遇については無視を決め込んでいる。

僕は特養の介護職から在宅のケアマネージャーに異動した。処遇改善加算がなくなったためとうぜん給料が減った。夜勤もなくなったため、夜勤手当もない。ダブルパンチである。夜勤手当がないのはまあいいとしても、はっきりいって納得いかない。法人からすれば介護職であろうとケアマネージャーであろうと基本給は一緒である。ケアマネになったからといって特別な手当などつかない。

介護職の数さえそろえば他はどうでもいい、のか?

ケアマネージャーは事務仕事だから楽で、介護職は肉体労働だからきつい、と考えるならそれはおかしい。ケアマネの仕事は大変そうだからやりたくない、と言う介護職はたくさんいる。苦労の種類が違うだけで、どちらもそれなりに大変なのだ。

僕の場合、処遇改善加算のあるなしで1万円くらい給料に差が出た。この差は今後もっと開いてくるのではないかと考えている。もし、次回の介護報酬がマイナス改定になり、処遇改善加算だけがプラスになれば、介護職とその他の職種の待遇格差がもっと広がることになる。

国は介護職の給与(待遇)だけは守りたいのである。このままいけば2025年には38万人ほど介護職が不足すると言われている。しかし相談員やケアマネージャーが不足するなんて話は聞いたことが無い。国がみているのは介護職だけなのだ。

介護職からケアマネに異動の話がでた人が「給料が下がるから」という理由で退職したということを聞いた。このまま介護職だけを優遇すると、こういうケースが増えそうである。相談員やケアマネの仕事をしてみたいけれど、給料が大幅に減ってしまうから介護職から変わることができない。国はまさにこういったことを求めていると思う。介護職になった人はそのまま介護職でいてほしいのである。

相談員やケアマネの待遇を改善するには

相談員やケアマネにとってはしばらく冬の時代が続くと思う。介護職だって他産業と比べればけっして良いわけではないが、業界内で比べればマシな職種になるはずである。僕は介護職も相談員もケアマネも経験したので言うが、それはちょっとないよな、と思う。こういった状況を打開するためには3つの方法があると思う。

1.処遇改善加算を介護職だけに限定しない
これが一番誰もが納得いく解決法だろう。介護職員だけにしか使えない、とするからいけないのだ。そんな差別を撤廃すればいい。でも全職種を対象にするとなると、加算額を増やす必要がでてくるだろう。そうなればその費用を負担する利用者側から反発の声がでてくることが予想される。僕は個人的にはそれでもいいと思っているのだけれど。

2.介護報酬をあげる
一番なさそうな案である。診療報酬をさしおいて介護報酬だけをあげられるわけがない。介護報酬をあげるとなると、とうぜん診療報酬もあげざるをえない。しかし高齢化によって社会保障費は自然に増えているのである。国はその自然増をできるだけおさえるよう頭をひねっている状況だ。別に社会保障費をあげてもいいが、それは国民への税・保険料負担として跳ね返ってくる。すると実質収入が減るから、景気に悪影響をもたらし、税収入が減る。政府はこれを恐れているから、この案は一番現実味がないと思う。

3.高負担・高福祉国家にする
僕は思うのだけれど、日本の福祉レベルはけっして低くない。もちろん細かくみていけば問題はある。児童福祉にもっとお金を使うべきだとか、精神障害者の福祉があまりにおそまつだとか、生活保護と就労支援がまったく結びついていないとか。いろいろあるけれど、全体の福祉レベルで言えば、中負担・中福祉の国であり、これはけっして悪くない。これを指して日本は「成功した社会主義国家だ」と言った人がいたが、誰の言葉か忘れてしまった。

中途半端に税負担と福祉を天秤にかけるからいけないのである。一歩、いや十歩くらい一気にすすめて北欧のように完璧に福祉国家化すればよいのである。

福祉国家と言われる北欧の3国(ノルウェー、デンマーク、スウェーデン)の人口は日本とくらべて極端に少ない。ノルウェーは523万人、デンマークは573万人、スウェーデンは少し多いがそれでも959万人である。いずれも東京の1200万人よりも少ない。

僕はこの人口の少なさが高福祉国家が維持できる一つの要因だと考えている。国民と政治家との距離が近く、不正をしようにもできない。また国民全体の総意もまとまりやすい。だから給料の半分以上を税金に拠出したり、消費税を20%に設定したりと、我々日本人からみたら嘘みたいなことができるのだ。

日本もこれから人口がどんどん減っていき、税負担はいやでも上がっていく。すると税金の無駄な運用はできなくなるのではないか。北欧3国は女性の働く場の確保と高福祉を両立させるために人口の3人に1人以上が公務員という国である。

日本も超高齢社会になる20〜30年後には税負担が今の数倍になり、医療・教育・福祉などの社会保障を担う従業員は公務員化しているかもしれない。働き手を確保するために専業主婦を介護職として公務員化させるとか。介護離職を防ぐために税金を使って特養を増やそうとする行為と基本的に同じである。

まあ消費税を10%に上げる程度でてんやわんやしているうちはまだまだ無理だと思いますけど。でも僕が年寄りになったときにはマクドナルドの普通のハンバーガーが1000円、吉野家の牛丼が並盛1500円、なんて時代になっているかもしれない。高福祉国家になるとファーストフードも食べれられなくなる。うーん、やっぱりそんなのは嫌だなあ。なかなか難しい問題ですね。

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