自動排泄処理ロボットと排泄予知ウェアラブルについて

厚生労働省と経済産業省は「ロボット技術の介護利用における重点分野」というのを作っていて、介護ロボットの開発、普及を後押ししている。これまでは5分野(①移乗介助、②移動支援、③排泄支援、④見守り・コミュニケーション、⑤入浴支援)、8項目だったが、今回1分野(⑥介護業務支援)、5項目が加えられた。何が加えられたか詳細を知りたい方は厚生労働省のページをご覧ください。

このうち、③排泄支援に追加された「ロボット技術を用いて排泄を予測し、的確なタイミングでトイレへ誘導する機器」が面白そうだったので取り上げたいと思う。

画像の説明

引用 トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社
http://dfree.biz/

排泄支援に関する介護ロボット

排泄支援に関する介護ロボット

そのまえに排泄支援に関する介護ロボットといえばこんなものがある。夢の(?)自動排泄処理ロボットである。「マインレット爽(大和ハウス工業)」や「エバーケア(エバーケア株式会社)」などだ。


マインレットの図

引用 大和ハウス工業
http://www.daiwahouse.co.jp/robot/minelet/

この自動排泄処理ロボットは2012年4月から介護保険のレンタル対象機器となっている。僕はこれまでに在宅介護の現場で一度だけ見たことがある。電動車イスなどに比べれば、レンタルされている数はずっと少ない。ほとんどみかけない、と言ってもいい。

どうやって排泄処理を自動化しているかというと、局部につけるカップに内蔵センサーがあり、それが排尿・排便されたことを感知する。すると排泄物が吸引される。そのあと温水で局部を洗浄し、さらに除湿まで自動的に行なってくれるのだ。

メーカーはこの製品のメリットを次のように訴えている。

・おむつ内に排泄する際の不快感がなく、爽やか
・家族やヘルパーに気兼ねなく排泄できる
・排泄ごとにおむつ交換する必要がないので身体的、精神的負担を大幅に軽減
・夜間の排泄ケアが必要ないので本人、家族とも睡眠できる
・排泄物の臭いがなくなり不快感がない

この機械をレンタルするには要介護度4,5で寝たきりの人という制限がある。また1ヶ月あたりのレンタル代が高く、だいたい6500円前後かかる(1割負担の場合)。電動車イスが2000円〜2500円程度だから、福祉用具貸与のなかではかなり高額な商品だ。

在宅介護の現場にはこういうものを必要とする人がいるから否定はしないが、汎用性が低い製品だと僕は思っている。例えば要介護4、5というと重度の介護が必要な人だが、拘縮があって股関節が十分開かなくなった人も多い。こういう人は局部にカップを装着できない。

たとえカップを装着できたとしても、ベッドを背上げするとカップが股間部に食い込むおそれがある。要介護者5の人などは「痛い」とも言えない人が多い。常時背上げが必要な人には使えない。またこの機械は排泄介助における根本的な問題を解決してくれない。僕にはそこが気に入らないのである。

自動排泄処理ロボットの問題点

僕が考える自動排泄処理ロボットの問題点は大きく2つある。

(1)寝返り(介助)ができない
局部にとりつける必要があるのだが、両脚を30度くらい開いた仰向けの姿勢で寝返りはほとんどできない。在宅介護で夜間の排泄ケアの負担軽減が主目的だとするなら、体位交換の介助だけに介護者が起きてくるわけがないので、ずっと仰臥位(仰向け)のままである。

もちろん要介護4、5の人は自力で寝返りができない。肉付きの悪い人は床ずれを起こす心配がある。

(2)寝た姿勢で排泄させることに無頓着になる
きちんと排泄するためには3つの条件が揃わないといけない。①排便のタイミング、②腹圧、③座位姿勢である。自動排泄処理ロボットがあるから安心となると、排泄の条件を軽視してしまうことになると思う。

①の排便のタイミングとは排便反射のことである。副交感神経が優位な朝で、胃に食物がはいってきた後、つまり朝食後にこの排便反射がおきやすい。

②の腹圧とは「きばり」のことだ。便がかたいときはきばらないと排便できないはずだ。お腹に力をいれ腹圧を高めて便を排出するのだが、これが寝た姿勢だと力を入れにくい。高齢者は腹筋も弱っている。せめて力をいれやすい姿勢をとってもらう必要があるのだ。

③それが座位姿勢である。腹圧をもっともかけやすい姿勢だ。また座位にはもう一つ重要な目的がある。便の重さを利用して、つまり重力を利用して排便できるということだ。肛門の位置的に、寝た姿勢では重力を利用した排便はできないのである。

排泄ケアの基本は朝食後のトイレ誘導である。オムツをつけていようが座位がとれる人なら、オムツをはずしてトイレに座ってもらうことが大事なのだ。

でもオムツをつけているのにどうしてそんな手間をかけなければいけないのか?と思われるかもしれない。なぜなら臥位(寝た姿勢)で排泄する習慣がつくと、だいたいの人が便秘になってしまうからだ。すると下剤を使う。しかし下剤は常用するとだんだん効かなくなっていく。そのためさらに下剤を増量する。するとたしかに便はでるのだが、大量の水様便になってしまう。水みたいな便は簡単にオムツから漏れる。そして衣服を汚し、ベッドシーツを汚す。

この処理はたいへんな負担である。とくに夜にこんな惨状に出会うと辛い。天をあおぎたくなる。天をあおいでも無表情な天井がみえるだけなのだけれど。

あとはこの繰り返しである。オムツ→下剤→水様便→オムツの常用→下剤の増量→多量の水様便・・・。

臥位だと体の構造上、どうしても便がすべて排出されない。だから便が腸内に残ってしまう。すると便がいつでるかわからなくなるので、常にオムツを着用しなければいけなくなる。これはオムツ着用が作った便秘である。つまり介護が作った便秘なのだ。こういうのを「排泄介助」とは言わない。ただの排便後の「後始末」である。

また認知症の人の場合、便秘でお腹がはったり残便感があるとそれが不穏な行動につながることが多い。すっきり排泄してもらうのは認知症ケアの基本でもあるのだ。こういった排泄介助の基本が軽視されるおそれがある。「排泄介護の負担軽減」などというのは表面的なものにすぎない。

下のような提灯記事もでているが、明らかに誇大広告だろう。

介護ロボットはすでに実用化されているものも多く存在します。なかでも介護の現場で重宝されているのは排泄ケアのためのロボットです。

介護関係者から絶賛の声 「介護ロボットで排泄ケアが楽になった!」
ケアマネドットコム http://www.care-mane.com/member/feature/764?CID=3&CP=1

僕は絶賛している介護関係者に会ったこともないし、そもそも介護現場にはぜんぜん普及していない。こういう機械があることを知らない介護職も多いと思う。介護家族はもっと知らない。

自動排泄処理ロボットが必要とされるケースとは

在宅介護の現場では介護施設のように常時介護を受けられるわけではない。訪問介護員がきてくれるとき以外にも排泄はまったなしである。要介護4、5で独居の人の場合、夕方におむつ交換をして、翌朝の訪問介護までオムツ交換を受けられない人がいる。こういう人には自動排泄処理ロボットはいいかもしれない。苦肉の策である。

家族が同居している場合も導入は一つの手である。夜の介護まで負担しなければいけなくなると、そもそも在宅介護なんて続けられない。排泄介護の負担はかなり重いので、それを軽減できるツールがあれば使えばよいと僕は思う。家族は仕事として介護しているわけではないのだ。

排尿のタイミングを教えてくれる機械

自動排泄処理ロボットは少なくとも介護施設には必要ないと僕は思う。それでは介護ロボットの「重点分野」に新しく追加された、排尿のタイミングを教えてくれる「DFree(トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社)」はどうだろう。

このほか、排泄のタイミングを予測する機器も選ばれている。例えば下腹部につけて使うウェアラブルデバイス「DFree(トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社)」は業界で認知度が高い。超音波で膀胱などの動きを探り、排尿の時間が近づくとスマートフォンに通知する機能を持つ。トイレ誘導の空振りや不要なおむつ確認などを無くし、利用者と職員の心身の負担を軽減できると期待されている。厚労省や経産省は今後、排便のタイミングも分かる新たな機器の開発支援にも力を入れる方針だ。

ケアマネタイムス 政府、介護ロボ開発の重点分野を改訂 排泄予測やコミュニケーションを追加
http://www.care-mane.com/member/news/8748?btn_id=news-list&CID=&TCD=0&CP=1

僕はいちおう介護業界の一員だと思っているのだが、このDFreeのことは認知していなかった。僕って遅れているのだろうか?

成人の一般的な膀胱容量は500ml程度である。尿意を感じる量は人によって差があるが、膀胱にだいたい200〜250mlくらい尿がたまると膀胱内圧が高まって尿意を感じる。

尿を我慢して尿の回数が少ない人はこの容量が多くなるのでよけいトイレにいかなくなる。逆にちょこちょと尿の回数が多い人は容量が少なくなるので、尿が少し貯まるとすぐに尿意を感じるようになり、さらにトイレの回数が多くなると言われている。

要介護高齢者の場合、尿意を感じてからトイレにいくまでに時間がかかるし、膀胱括約筋も若い人にくらべてゆるくなっているので漏らしてしまうことが多い。認知症が進んでいる人はトイレの位置がわからなかったり、尿意を言葉で訴えることができないので介護者がタイミングをみてトイレに誘導してあげなくてはいけない。

トイレ誘導は結局センス?

トイレの間隔には個人差があるが、よっぽど頻尿の人をのぞいて、だいたい2〜3時間に一度の間隔でトイレ誘導すればはずすことはない。トイレ誘導をしっかり意識している介護職なら「そろそろトイレ誘導のタイミングだな」、というのが感覚でつかめてくるものである。

そういった介護職にはこんなウェアラブル・デバイスなど必要ない。日によって水分摂取量や活動量が変わる。そういったものも介護職は勘案するので、機械なんかよりよっぽど正確にタイミングが把握できる。

しかし介護職といっても経験に差があるし、また排泄介助に対する意識の差もある。こう言っては身も蓋もないけれど、トイレ誘導のタイミングが分からない人は、一生わからない。要はセンスの問題である。

僕はこのDFreeは使い方次第でとても良いものになると思う。繰り返し使うことで排尿のタイミングが正確に分かるようになるし、視覚的にも確認しやすい。うまく使えば介護職による技術差が少なくなるのではないか。そう僕は期待している。

でも機械に排泄のタイミングを通知されると、その場の状況を考えずトイレ誘導を最優先する人がぜったい出てくると思う。機械を使うのではなく、機械に使われるのである。

あと少しでご飯が食べ終わる、大事な家族が面会に来ている、レクでせっかく盛り上がっている。そんなときもおかまいなしにトイレの声かけをする。そういう状況が読めない人っているのだ。こういうのもセンスの問題なんでしょうね。

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