介護報酬アップのために介護職はストライキを起こせるか?

介護報酬と診療報酬のダブル改定が近づいている。介護保険部会や財務省の審議会の様子をみていると、次の介護報酬もけっこう厳しいことになりそうな雲行きである。こんな動きのなか、介護関連団体は介護報酬のアップを求める署名運動の展開を始めた。
http://www.care-mane.com/member/news/8717.html?CID=&TCD=0&CP=1

僕は署名運動に関してはないよりあったほうがいい、くらいにしか考えていない。そもそも財源の引き締めが既定路線としてすでにさだまっているのは明白である。そこにいまさら感の強い署名運動をしても焼け石に水だと個人的には考えている。だから署名運動よりいっそのことストライキを起こしたらどうかと考えている。全国の介護事業所、介護職が介護報酬アップを要求してストライキをおこすのだ。

こちらのほうが世間に与えるインパクトが強い。逆に言えば本当に報酬アップを要求するならこれくらいのことをしなければいけないだろう。介護職のストライキが実現するかどうかはとりあえず脇に置いて考えたとしても。

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介護職の数は増えている。しかし「良きなり手」が集まらなないのは事実

少し前に安倍首相が介護のために仕事を辞めざるをえなくなる人(介護離職)のために、特別養護老人ホームを増設すると言ったばかりだ。しかし箱物ばかりを用意しても、そこで働く介護職の数を確保しないとどうにもならない。誤解がないように指摘しておくと、介護保険が始まっていらい、介護職の数は年々増えていて、減った年はこれまでにない。だから数自体は増加しているのだ。ただ、世間の高齢化のスピードに介護職の数が追いついていないだけなのだ。

もし介護職が全産業の平均並みの給与をもらえて、年齢にあった昇給も望めるような普通の職業として選択できるなら、人材の質も量ももっとよく集まると思う。介護職、ひいては介護業界の質の向上も期待できるだろう。これは間違っていないと思う。

しかし、現状では単なる介護職一本だと一家を支える経済的支柱になるには心もとない。もちろん勤めている法人にもよるのだけれど、まあ一般の認識からいっても、僕の経験からいってもかなり厳しいのではないかと思う。そのために「良きなり手」がなかなか集まらないという事実はあると思う。

国の介護人材確保の考え方はかなりおかしい

国は介護ロボットとか、ICTの活用を推進している。介護人材の確保がなかなかできないので、介護ロボットの導入で人間が3人必要なところを2人に減らせれば儲けものとか、そんな腹づもりなのだろう。しかし、介護ロボットやICTを導入したからと言って、そんな単純に人材の不足分が補えるわけがないのだ。

かと思っていると、こんなのも出てきた。これも介護ロボットと同じで、さいきん流行りのAI頼みである。

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《 画像提供:ワイズマン 》

電子カルテや介護ソフトなどこの分野でソリューションを展開するワイズマンは、11月下旬から「おむつ最適化AI」の販売に乗り出す。過去のデータなどを基に個々の特性に合った「おむつプラン」を提案する新サービスだ。利用者と職員の心身の負担を軽減できるメリットがあるとして、介護施設などに広く売り込んでいく計画だ。(中略)
29日まで開催されていた「国際福祉機器展 H.C.R 2017」では、実証実験を通じておむつ交換の頻度を低くする効果が確認できたと説明。結果としてコストも低く抑えられるとPRした。漏れによる衣服の汚れやそれに伴う着替え、体位変換なども少なくて済むとしている。
http://www.care-mane.com/member/news/8713?CID=&TCD=0&CP=1&code=pc1006

食事、排泄、入浴介助は輪のように繋がっている

いったい誰がこんなしょうもないことを思いつき、実証実験(じっさいの利用者を実験につきあわせたのだろうか?)までして、実行に移そうと思ったのだろう?施設での排泄介助=オムツ交換というイメージが先行しすぎではないか。施設入所者のすべてがオムツをしているわけではない。というよりも、完全オムツの人の割合のほうが少ないはずだ。オムツではなく紙パンツやパッドを使う人もいるが、介護職に手伝わさせずに、1人で処理している人も大勢いる。

入所者をきちんと観察できる介護職、つまり普通のまともな介護職なら、AIなんていう中身のわからない機械に頼らなくとも、適切なオムツの選択、交換回数はもとより、本人に合った水分補給、脱水予防、適正な食事量、運動の程度などなど、いろんな角度から総合的に排泄介助にむすびつけるものだ。

もちろん排泄介助だけが突出してあるわけではない。すべての介護業務は輪のようにつながっている。ここからここまでは排泄介助、という明確な線引きがあるわけではないのである。他の食事介助、入浴介助、レクリエーションなど、すべての介護業務、ひいては利用者の生活全般にわたって日々アセスメントし、それを現場の介護という結果に置き換えている。

だから排泄介助のみに視野を限ったこんなAIに意味はないと思う。人間というのは、介護というのは、もっと総合的なものであるはずだ。

人間対人間の駆け引き

AIに介護の中身を明け渡してどうするのだ、と僕は言いたい。重労働だと思われている移乗介助(これも誤解がかなり含まれている)を介護ロボットにさせることが介護人材不足をおぎなう術だと国は考えているように思うが、想像してみてほしい。

嫌がる老人を無理強いして立たせる介護ロボットの姿。かなり怖いはずである。これが人生の百戦錬磨のおばちゃん介護職たちが、老人をうまく(口車に)のせて立たせる図に置き換えてみると、別に怖くない。

老人「今日はいやなんじゃ」

おばちゃん介護職「なに言ってんの。息子がくるんでしょ。立てなくなったらここよりもっとひどい老人病院に送られるのよ!」

老人「そんなひどいこと言わんでも」

おばちゃん介護職「あんたのことが心配だから言ってんでしょうが」

ここには人間対人間の駆け引きがある。ロボットがSF並に高度化して人間とほとんど変わらない思考と動きができるのなら介護をまかせられるだろうが、そんな未来は100年ほど後の話しだろう。そのころには高齢化の波はとうにすぎさっていて、まったく別の問題が持ち上がっているかもしれない。

介護職にストライキはおこせるか

最初に戻るけれど、僕はストライキをおこしてもいいと思う。それくらいのことをしてもたぶん罰はあたらない。けれど、現場の介護職は目の前の老人を見捨てるようなことはできないだろう。だからストライキは成功しないはずだ。人目をしのんで施設にいき、トイレ介助やらオムツ交換やら、入浴介助をしてしまうはずだ。

本当に全国の介護関係職が1週間くらいストライキをおこせば、社会は大混乱に陥るだろう。6ヵ月も続ければ後戻りできない打撃を日本に与えることができるはずだ。何しろ要介護高齢者は平成29年時点で約600万人。介護が必要な親をもつ子供の数を考えても、2000万人くらいの国民に深刻な影響を与えると考えられる。

そんな妄想を頭の中で描いても意味がないので、ほかの妄想をここに披露してみる。
介護職の給料を上げるためには全国の第一号被保険者(65歳以上)と第2号被保険者(40歳以上の医療保険加入者)の保険料負担を今の1.5倍くらいにし、介護保険サービスの利用料の負担割合はすべて3割負担、医療保険も年齢や年収に関係なく3割にする。そうすれば生活苦から介護サービスや医療サービスを利用する人が減り、早死する人が増える。結果として高齢化に歯止めがかかる。

介護サービスは代替不可能な価値

国が推し進めているのは、確実に上のようなサービス利用者側の負担増の方向である。それは財務省のものいいにはっきりあらわれている。

介護職は現代社会に必要な職業である。もうすでに機能的に他に置き換えられらない存在になっている。介護サービスが世間に行き渡っているので、これがなくなると「サービスが利用できないと不便だなあ」と思うだけでは済まされないレベルに達しているのである。介護サービスはすでに代替不可能で個人や家族の力でもカバーできない価値になっている。

ストライキや社会急変の力を借りずに、なんとか超高齢社会を乗り越えていく方法はないだろうか?もうその答えをわれわれは手にしていないといけないはずなのだけれど。

コメント

  • 財団のような募金のような存在

    ほんとうに、介護はただベルトコンベア方式でやりまくるものだけではなくて
    あらゆる側面が絡み合うというものだと実際に仕事をしてわかりました。

    世の中の人が、介護者にはもっと賃金が支払われるべきだという思いを強く持っているとして。
    それを実行する経路が今あるか…。
    ないです。

    施設で働く介護者に、ハイどうぞとカネを渡すわけには行かない。

    「日本国」という国を通して税金として渡っているのかと言っても…
    税金という名前で徴収されてその税金がどの分野にどのくらい使うのかを決めるのは
    議員さん。


    個人個人の、「介護者へカネが渡ってほしい」という思いが直接的に直通で叶うわけではない。


    なにか、財団のような、募金でストックしてその中から介護者への手当を出すような
    そういうものがあるといいのにと、私は考えました。


    「税金」という名前では、札(ふだ)が付いていないから、それがどこへ回されるかわからない。
    でも「税金(介護分野用)」という用に徴収の段階で札を付けることができるならば
    そのときのその国民一人一人の
    「この局面においてこの分野にカネが回るべきだ」という願いが、速いフィードバックで叶う。

    直通で叶う。


    「分野別貯蓄税」(分野別自主税)を提唱します。


    国民一人一人は、「このおカネをこの分野へ渡す」ということで、分野別にカネを自ら入れることができる。

    たとえば、アニメ業界用、介護業界用、IT業界用…、こっちからこっちの箱へと中身のカネを動かすことはできない
    (現在の税制度では予算案作成時にそれができてしまう)。


    そういう、分野別の、『募金箱』の設置を、官でも民でもいいからこれから創ってゆきたい。


    これは間接民主制を、半分だけ直接的民主制に移行させるというような行為に相当している。



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