複雑な有料老人ホームの費用 その注意点

有料老人ホームに入居するには、とうぜんですがお金がかかります。とくに入居一時金という有料老人ホーム特有の仕組みは少し複雑で、理解していないと損をすることも。けっして安い買い物ではない老人ホーム。人によっては晩年を過ごす我が家でもあります。今回はこの有料老人ホームの費用について見ていきたいと思います。

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有料老人ホームの費用とは

有料老人ホームの特徴として、月額の利用料金とは別に、入居時にホームに支払う費用があります。それが「入居一時金」です。終身の利用権を取得することを目的としたもので、実質的には家賃の前払いと考えてよいでしょう。

金額はホームごとに任意に決めることが出来ます。数十万円から数億円という幅があります。最近は入居一時金を無料にしている老人ホームもあります。但し、一般的に入居一時金が0円の施設は、月額費用が高くなります。入居一時金は毎月の家賃に分割されて割り振られるからです。

この入居一時金ですが、入居時に一部が初期償却されます。初期償却分の割合もホームごとにさまざまですが、30%が多いようです。残り70%分の金額から、償却年数で少しずつ償却されていきます。

もし、償却年数の途中で入居者がホームを退去した場合は、残っているお金が返還されます。老人ホームによって、入居一時金の額と償却方法(初期償却の割合、期間)は異なります。入居前に必ず確認が必要です。また、あまり一般には知られていませんが、入居一時金にはクーリングオフが適用できます。契約から90日以内に契約を解除した場合は一時金が全額返還されます。

老人ホームの費用の種類

老人ホームの費用のウエイトを占めるのは、主に入居時に支払う「入居一時金」と「月額費用」です。加えて介護や医療にかかるお金なども計算にいれておかなくてはいけません。それらの費用について詳しくみていきます。

・入居一時金
入居一時金とは家賃の前払い費用です。家賃相当額の全部または一部を前払いします。金額は施設によって0円(なし)から数億円と大きく幅があります。また各ホームで「償却期間」が定められています。償却期間とは、前払い金をどのくらいの期間で使い切るか?ということです。

例:「入居一時金 1,500万円 償却期間 5年間」
この料金設定の場合では「ご入居から向こう5年分の家賃相当額を前払いする」ということです。
もし、償却期間の5年以内に退去した場合、「未償却の残金」が返還されます。
ちなみに返還額(未償却の金額)は以下のように計算します。
(入居一時金)×(償却期間 -入居期間)÷償却期間=返還額

今回の設定で3年間(=36ヶ月)入居後に退去された場合を想定してみると・・・
1,500万円×(60ヶ月-36ヶ月)÷ 60ヶ月=600万円。返還額は600万円となります。
ちなみに、施設によっては「初期償却」を実施しているところもあります。通常「初期償却 入居一時金の〇〇%」などと表示されています。
初期償却の場合は入居の時点で一時金が償却されてしまう制度です。
極端にいうと例えば初期償却100%の場合は、半年後に出ても全額返ってこないということです。

初期償却は30%程度の設定が一般的です。
入居一時金30%の設定の場合は、1500万円の30%は450万円なので、入居時点で450万円が償却され残り、1150万円を5年間で割って行くという形になります。
初期償却の考え方も理解してもらうために簡単な例を用いました。
初期償却がなされた場合、償却期間以内に退去した場合にもその分が差し引かれてしまうので注意しましょう。

最近の法改正などもあり、今後採用する施設は減っていくと考えられています。
入居一時金は「クーリングオフ制度」の対象となります。これは「頭を冷やして、冷静に(cool-off)」考える時間を持ち、もし何かあっても一定の期間内であれば無条件に契約を解除できるという制度です。
入居一時金の場合は入居後90日以内に退去した場合は、入居一時金は初期償却分も含めて全額返還されます。初期とありますが、この制度もあるため厳密には「91日目」に償却されると押さえておきましょう。

・月額利用料
具体的に「月額利用料」は3つの項目に分類されます。
『家賃相当額』
居住する居室を利用するための費用です。一般的に有料老人ホームが立地する地域の家賃相場等をもとに決定されます。また同じ施設内にあっても居室の広さや間取り等に違いがある場合は、それにより変動する増減するケースもあります。
また水道光熱費などの費用をこの項目に含めている場合もあります。
月額利用料の一番の基礎部分になりますので、高すぎないか?等、疑問があれば事前に必ず解決しましょう。

・『食費』
食事サービス(1日3食)を利用した場合に発生する費用のことです。多くは朝食、昼食、夕食それぞれに価格が設定されており、喫食分(召し上がられた分)のみを負担することが多いです。
施設内の多くの入居者それぞれの好みに合わせるのは難しく、場合によっては別途有料でオプションメニュー等を利用する方もいらっしゃいます。
日常、どんなお食事を提供しているのか?試食できる施設が多いので、実際に食べてみましょう。また、味だけでなく、食事形態(嚥下食など)などの希望がある場合は対応の可否、その時の料金負担なども確認しておくべきポイントです。

・『管 理 費』
施設にはご利用者が住まわれるお部屋以外にも、談話スペース、食堂など共有されるスペースがあります。こうしたスペースやお風呂(個浴、特浴、機械浴など)、配管、空調などの維持管理のための費用です。
居室の清掃や、買い物代行などまで含める施設もあり、この費用に含まれる範囲は施設によって異なります。施設での日常生活に関係する部分ですので、こちらも必ず確認するようにしましょう。
「月額利用料」を3つの項目はお分かり頂けましたでしょうか?これらの項目は毎月必ず発生してくる費用です。

医療・介護に関する費用

施設に暮らすだけならそこに住むための費用のみで済みますが、有料老人ホームですので医療や介護が必要な場合があります。たとえば、家に住んでいる方が、お医者さんにかかったり、デイサービスに通った場合、利用した分の費用を負担します。費用は、医療・介護を提供した事業所に支払います。では、有料老人ホームに入居している場合はどうでしょうか?基本的にはかかった費用を払うという原則は変わりませんが、施設の形態によって少し違いがあります。

・住宅型有料老人ホームの場合
住宅型有料老人ホームは生活支援、健康相談、生活相談などには対応しますが「介護保険上のサービス(入浴、排泄、食事の介助など)」は提供していません。
介護保険上のサービスが必要な場合は、サービスを提供している事業所と、個別に契約して支払う形になります。

・介護付有料老人ホーム
介護付きでは住宅型とは異なり、施設の職員が「介護保険上のサービス(入浴、排泄、食事の介助など)」も含めて、包括的にサービスを提供(※1)します。
この場合、入居している施設に費用を支払う形になります。
注意が必要なのは、こうしたサービスを利用した場合の費用は「月額利用料には含まれていない」ということです。

※1:訪問診療など、医療に関する内容は住宅型も介護付もともに個別の費用が発生します。この点は次の項でも詳しくお伝えします。

介護保険サービスの自己負担分について

介護付有料老人ホームで、介護保険上のサービスを利用する場合、月額利用料とは別に「介護保険サービスの自己負担分」が発生します。
所得状況等により、介護保険サービスの自己負担割合が1割か2割に分かれます。
この費用は、入居される方の「要介護度」に応じて基本の金額が決定され、また施設により算定している「加算」などを加味したうえで合計の金額が算出されます。

上の表は加算を加味していない状態での金額です。

加算とはサービスの質や量に応じて料金が増すことです。
「個別機能訓練加算」
「夜間看護体制加算」
「医療機関連携加算」
「看取り介護加算」
「認知症専門ケア加算」
「サービス提供体制強化加算」
など、名前からも少し想像できるようにサービスの内容や、サービスを提供する体制などが基準になります。

一定額でも、できることは施設によって違いがある

最後にとても大切なことがあります。それはこの介護保険のなかで対応できるサービスは施設によって異なることです。例えば「入浴は週〇〇回まで」「居室の清掃は〇〇回まで」といったように施設によって異なります。

どの施設も共通して「(介護保険のなかで)どのようなサービスを提供するか」は決めることとなっていて契約時の書類である「入居契約書」、「重要事項説明書」などに記載されています。

・おむつ等のアメニティ費用
《なし》 介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設 ショートステイ
《あり》 有料老人ホーム、グループホーム、ケアハウス、サービス付き高齢者向け住宅、デイサービス

かかった費用の明細も確認しよう

別途費用負担がある場合、請求書の明細について確認できる施設を選ぶことが大切です。特に生活に必要な経費として先渡しし、そこから利用した分を差し引く契約であれば、必要以上の経費計上をされてしまう可能性があります。

もちろんおむつの使用数などを毎月固定数に留めることは難しいですが、毎日おむつを使用される方の相場は1万円~2万円以内と言われていますので、目安にしてください。

そのほかにかかる経費とは?

介護付有料老人ホームでは、「医療と介護に関する費用とは?」でも通院時、ご家族の希望により利用したタクシー代の料金も負担対象になるという例をお伝えしたように、「基本的な介護内容に含まれないサービス」は別途必要になります。

趣味や嗜好品などにかかる費用はわかりやすいですが、施設によっては町内会費なども必要になります。

また、枕カバーや布団カバーなどのクリーニングは月額利用料に含まれている一方で、ご自身の洋服などのクリーニング代は自己負担など、月額利用料に含まれている範囲は施設によっても差があります。

介護保険の対象にならないサービスのうち、特に似たような名称のサービスがある場合は、施設が負担するものなのか、ご家族が負担しなければならないのかは、入居前に確認してみるとよいでしょう。

老人ホームの入居金と償却金

入居一時金が高額なホームも多くなっています。一時金は、利用者が老人ホームに「預けるお金」という位置づけのものです。そのため、入居者が途中で退去することになった場合、償却分を引かれた残りの金額を返還してもらえます。返還金の「償却」は、是非チェックしておきましょう。償却についてのチェックポイントを3つ紹介しておきます。
check 1. 償却期間の長さ
一般的には、介護付き施設は短く設定され、健康型・住宅型施設は長めに設定されています。例えば、介護付き施設の場合、5年程度。健康型・住宅型では、15年程度に設定するホームが多いようです。ただ、償却期間はホームが独自に設定できるものなので、事前の確認は欠かせません。

check 2. 初期償却される金額
有料老人ホームは慈善団体ではないため、通常の企業活動と同様、利益を出さなければ運営していけません。入居一時金の初期償却とは、ホーム側の利益確保分として、入居者が入居した時点で引かれる金額のことです。統一された基準がないため、ホームによって0%から80%と、かなりのバラツキがあります。

check 3. 償却方法について
入居一時金の償却には、2つの償却方法があります。「定額償却」と「定率償却」。同じような言葉ですが、「定額償却」は月割で同じ金額が償却されていく方法で、「定率償却」は期限ごとに同じ率で償却されていく方法です。この2つを比べると、「定額償却」の方が、年間の償却金額が少なくなり、入居者には有利な方法だと言えるでしょう。

老人ホームの費用に関する注意点

もちろん、施設が豪華なところや、特別なサービスが付いている高級老人ホームほど、一時金は高くなるのですが、高いからといってすべての入居者が満足するホームであるとは限りません。その反対に、料金が安いからサービスが悪いということもありません。費用はあくまでも目安です。ホームのサービスや居心地は、かかる費用の額よりも、スタッフの質やホームの運営方針によるところが多いので、料金だけを基準にして、有料老人ホームの良し悪しをはかることがないようにしたいものです。

入居一時金は高額なものです。無理して貯金をはたいて高いホームを選び、あとでご家族の生活が成り立たなくなるようでは、本末転倒。金額だけで判断するのではなく、総合的に情報を集めながら、快適に生活できる環境を選びましょう。そして、一時金は余裕を持って支払える金額を条件にするのがいいでしょう。
また、有料老人ホームを探しているときに、退去時のことまで頭は回らないかと思います。ですが、退去時に返還されるお金のことを考えておくのも、大事なこと。入居一時金で償却される内訳や、償却方法について、ちゃんと確認を取っておくのも、ご家族の今後を考えたとき、大切なことになるのです。

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