認知症の人が有料老人ホームを選ぶ時のポイント

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老人ホームにみずから好んで入居する人はほとんどいません。介護する家族にしたところで、しかたなく入居させたという方が大半だと思います。在宅介護をあきらめる、もしくは困難になる最大の理由は認知症です。具体的には意思の疎通がうまくとれない、常時の見守りが必要、排泄がうまくできなくなった。これらに家族が対応できなくなり、介護施設=老人ホームへ入居させることになります。

老人ホームと言えば特別養護老人ホームを連想する方が多いかもしれませんが、ご存知のとおり特別養護老人ホームは待機者が多く、希望したときに入れるとは限りません。また要介護3以上にならないと、原則として申し込みもできなくなりました。そこで入居先として有料老人ホームを選択肢にあげる人が増えています。そこで認知症を持った人が有料老人ホームを選ぶ時のポイントについて考えてみたいと思います。

有料老人ホームとは?

「有料老人ホーム」という名前を聞いたことがない人はいないでしょう。しかし、「それでは有料老人ホームについて説明してください」と言われると、きちんと説明できる人はほとんどいないと思います。現代の有料老人ホームは一度入ったら、とたんに方向を見失う複雑怪奇な様相を呈しています。

「大部屋にベッドが並べられて、そこにオムツをつけた寝たきりの老人がいて・・・」、なんて言う人は昭和の時代のイメージから時間が進んでいないか、介護にまったく関心のない人でしょう。現在の有料老人ホームは個室になっており、排泄もできるだけトイレで行うように、と考えられ、できるだけ離床が促されています。

「入居金に何千万円もかかって、月額費用も特別養護老人ホームよりずっと高いから、お金持ちしか入れない」。このイメージも古いものです。そもそも「有料」老人ホームという言葉が混乱の元凶だと思います。有料老人ホームとよく比較されるものに特別養護老人ホーム(特養:とくよう)がありますが、特養も「無料」ではないですし、なかには有料老人ホームと同じくらいの費用がかかるところもあります。

「介護付」、「住宅型」、「健康型」の違い

実はいま「老人ホーム」と言われるものにはたくさんの種類が存在します。今回とりあげるのは有料老人ホームですが、これも大別すると3種類あります。「介護付き有料老人ホーム」、「住宅型有料老人ホーム」、「健康型有料老人ホーム」です。それぞれに特徴があるのですが、非常に理解しにくいものになっています。

「介護付」の特徴は?
介護付き有料老人ホームは、食事、介護など要介護生活に必要なすべてのサービスが付随した居住施設です。こちらは入居者に対してホームに勤務する介護職が介護サービスを提供します。介護サービス費は介護保険が使えるので、負担割合は所得に応じて1〜3割です。

日中は看護師がいますが、夜間はいません。しかし施設によっては夜間帯も看護師を配置し、医療体制を強化して差別化をはかっているところもあります。受けられる介護サービスという点については、特養や老人保険施設といった介護保険施設とほとんど違いはありません。

「住宅型」の特徴は?
次に住宅型有料老人ホームは、主に食事などの生活支援だけが付随した施設です。介護サービスを利用するときは、施設に勤務する介護職員ではなく、外部の訪問介護事業所の介護サービスを利用することになります。基本的に食事付きの高齢者マンションと考えておいたほうがいいでしょう。

ホームに常時待機スタッフがいるので、見守りと緊急時対応などの生活上の援助は受けられますが、介護サービスは外部から購入することになります。入浴や食事の介護、リハビリなどのサービスは、利用した分の費用が在宅介護サービス費として別途かかります。この介護費用の考え方は自宅で暮らしている要介護高齢者とまったく同じです。

つまり要介護度に応じた一ヶ月あたりの負担上限額が決められているので、それを超えて介護サービスを利用した場合、その費用は10割負担となります。

「健康型」の特徴は?
健康型有料老人ホームも食事などのサービスが付随した高齢者向け居住施設ですが、こちらは「健康」という名の通り、介護を前提としていないため、仮に居住者に介護が必要な状態になった場合、退去する必要があります。
数として最も少ないのがこの「健康型」で、ほとんどみかけないと思います。有料老人ホームというより高齢者専用マンションと表現したほうがわかりやすいかもしれません。高齢者専用マンションとの違いは食事付きで、生活上の相談員がいるという程度です。

健康型で注意すべきは、名前のとおり健康な間しか住み続けられないことです。現在はサービス付き高齢者住宅という、健康型有料老人ホームと内容に差のない住居があります。じっさいに健康型有料老人ホームからサービス付き高齢者住宅に転換した例も多く見られます。

同じ敷地内、もしくは同じ建物内で健康型と介護型をわけている有料老人ホームもあります。このようなホームでは、介護が必要になれば転居(転室)することになります。入居時にはまわりに要介護の人がいないほうがいい、という希望の人は、このような老人ホームを選択するのが良いと思います。

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有料老人ホームの利用料について

このように介護サービスの提供方法の違いが、3種類それぞれのホームの相違点になっています。いっぽう、これら3種類の老人ホームの費用ですが、初期費用となる入居一時金は0円から数千万円までまちまちです。同様に月額費用も10万円台半ばから数十万円と幅があります。

入居一時金は初期償却率と、償却される期間が施設ごとにバラバラです。仮に初期償却が入居一時金の3割とすると、残り7割が定められた償却期間に適用されます。初期償却率が低く、償却期間が長いところが良心的な施設と言えますが、これは入居者側があらかじめ確認しておくべきことです。

またこの入居一時金にはクーリングオフ制度が設けられています。入居して90日以内に何らかの理由で退去した場合、入居一時金が返還されます。クーリングオフの対象を入居一時金全額を対象としているところや、利用日数分の料金は日割り計算して請求されるところなど、条件が異なる場合があるので、クーリングオフの対象となる範囲も確認しておく必要があります。

有料老人ホームの人員体制

有料老人ホームを見学するときは、ホーム側の案内人が建物や設備などについてはきちんと説明してくれます。それらは自分の目で見て、説明を聞けばわかります。しかしそれよりも重視すべきは人員体制のほうです。これはみなさん忘れがちです。短い見学時間では人員体制まではわかりません。

介護付の場合、人員の最低基準は入居者3人に対し、介護スタッフ1人の配置となります(3:1)。これは特養、老健などとかわりません。もちろん最低基準ですので、なかには2.5:1や2:1という比較的手厚い職員体制を敷いているところもあります。

しかし、人員基準を割合で確認してもあまり意味はないと思います。最低基準しか置けなくても、良い介護をしているところはありますし、逆に手厚くてもよい介護をしているとは限りません。そこでこの人員基準について聞くべき所は、ずばり夜間帯の配置人数です。夜間に何人の職員を配置しているか、またその考え方を聞くことで、その施設の人員配置の考え方がわかります。

昼間は食事、排泄、入浴介助などを行うため配置を厚くしなければなりませんが、夜間は排泄介助、見守り(巡視)が主な業務になります。そのため夜間帯は24時間のなかでもっとも人員配置が薄くなる時間帯です。排泄介助と見守り(巡視)だけなら業務量が減ったと思いがちですが、人も減っているため、けっして楽になったわけではありません。逆に入居者が全員居室に戻っていて見えない分、ベッドから起き上がって転倒していないを気にしなければならず、昼間より緊張の度合いは高いとも言えます。

最も危険な時間帯は1人夜勤のとき
とくに1人夜勤体制の場合、もっとも危険な時間になります。認知症で徘徊があったり、帰宅願望を訴えたり、昼夜逆転して対応が必要な入居者が多いと、昼間以上の忙しさになります。勤務しているのは自分1人。プロの介護職といえども入居者との相性があります。どうしても「合わない」人はいるものですが、もしそんな入居者から夜間に何度もナースコールを押され、大した用でもないのに呼び出され、嫌味を言われ、揚げ足をとられ、罵られたりしたら、正常な判断力を保てる自信をもつ人は少ないと思います。

こういった状況に置かれた時、「夜が明ければ仲間が来てくれる」、「彼(彼女)が早番でくるまであと3時間がんばろう」という安心感が持てる職場と、「寝かせてないから早番に来る職員に嫌味を言われそう」、「夜勤の回数を減らして欲しいけど、そんなこと言える雰囲気じゃない」という職場ではまったく負担感が違います。

負担感が重たい職場では離職率が高いものです。職員が変われば入居者はとまどいます。職員の間でも新しい同僚に慣れるまでに時間がかかるものです。仕事を覚えてもらうまではなかなか職場の雰囲気が落ち着きません。

認知症を悪化させているのは施設職員の雰囲気
その落ち着かない雰囲気を敏感に感じ取るのが認知症の入居者です。落ち着かない雰囲気が伝染して、なんとなく落ち着かない入居者を生み出します。それがまた業務量を増やし、負担感を高め、職員の離職、新規採用、また落ち着かない雰囲気が作られる、という悪循環を生み出します。

昼間は職員が多いので負担感は薄められますが、夜間はそうはいきません。そのため、夜間帯の人員配置について施設がどのように考えているのかといったことが重要になるのです。
しっかり仮眠がとれるように指導しているのか、1人夜勤の現場での職員のメンタルケアをしっかり意識しているか。この部分に介護施設経営者としての資質がみえると思います。

次回「特養との違いについて」に続きます。

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