AIやロボット導入の議論の前にすること

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にとっては老人介護も経済戦略の道具でしかない。もちろん経済のことを考える人も必要である。経済観念という物差しがないと国は成り立たない。
福祉先進国と言われている北欧のフィンランドでも、在宅福祉政策の黄金期だった1990年台とくらべ、2000年台では訪問介護でできることが制限されるなど、財政がケアの内容を決めている。

同じく北欧のスウェーデンも同様で、1990年台の金融危機以降、高齢者介護に対する予算の縮小がおこなわれ、かわりに子育て、障害者(つまり未来の税金の担い手)に対する保障を手厚くした。障害者に常時介護者をつけたり、保育園の待機児童問題を完全に解消したりといったことだ。

そのため出生率があがったが、反対に高齢者介護の現場では質の低下がおこったとされる。自治体が管理運営する老人ホームで身体拘束の不祥事があったり、家族介護が増えた結果、介護離職する人が発生しているという話だ。このスウェーデンの例からもわかるように、高齢者介護のケアの質は社会保障にまわせるお金次第でいくらでも変わる。

次の介護報酬改定で自立支援を評価 成長戦略に明記 AIケアプランや書類半減も
ケアマネタイムス http://www.care-mane.com/member/news/8345?btn_id=ranking-view&CID=&TCD=0&CP=1

記事の内容はそれほどでもない。タイトルを読めばだいたい想像できるかと思う。今回はケアマネたちのコメントが面白かったので、そちらが中心。

ロボット未導入減算?

「ロボットやセンサーの導入により、夜間の見守りなど介護職員の厳しい労働環境が大幅に改善される」
センサー反応したら、行くのは介護職員でしょ。。人員基準を見直してくださいよ、報酬上げてさ。
まさか、「ロボット未導入減算」なんて作らないでね。by racchi(施設)

会議のなかで誰かが「ロボットやセンサーの導入により、夜間の見守りなど介護職員の厳しい労働環境が大幅に改善される」と言ったらしく、それに対する反応。この意見には激しく同意する。けっきょくセンサーが反応したら行くのは人間なのだ。

それにセンサーだって万能ではない。別にいまだって起き上がり時に反応するセンサーとか、ベッドから足をおろしたら反応するセンサーだとかいろいろある。それがちょっとばかり高性能になったところで、あまり変わりない気がする。

僕が働いていた施設にもちゃんとセンサーがあった。掛け布団に洗濯ばさみで鈴をつける。それがリンリン鳴ったらおきあがったとわかる。古典的だがちゃんと役目を果たす。でも、ときどき音をたてずに起き上がる人がいる。巡視で部屋を回っていたらベッドに座っていたとか、部屋のドアが開く音で起き上がってきたのに気づくとか、そんなこともあった。感圧式のセンサーでも同じようなことは経験している。たまたま反応しなかったり、コンセントにつなぐのを忘れたり、スイッチを入れ忘れることもある。

さすがに減算はしないだろうけど、国はいつもの手でロボット導入に補助金をつけている。今後も補助金作戦は続くだろうから、事業所がまたまた飛びつくんだろうな。

介護従事者の公務員化

第三者が「あの人は一人暮らしだし大丈夫だよね?」といってしま えば介護保険の「事故」もなくなるわな・・・
ここまで国が介護従事者に「スキルアップ」「処遇改善」「資質の 向上」「AIなど導入」とか現場の実務に介入するなら介護従事者の公務員化を認め、法により介護従事者を保護し、法により資格更新を定めて、介護保険事業を行えばいい
いわゆる「措置」に戻すべき話であって、営利法人の介入なんぞ認めなければいい
厚労省や各種会議で行われる会議に「本当の実務経験者」はいかほど参加していますか?
理想論で始まった介護保険制度はすでに現実を見なければいけなくて、「走りながら制度を固める」と言う時期はとうの昔に過ぎ去ってい ることを役人は認めようとしないでしょ?by 雇われ施設長

確かに走りながら制度を固める時期はとっくの昔に終わっていなければいけないですよね。まだ必死に走っている感じがありありとする。そろそろゆっくり散歩でもして、「ああ、なんというふことだらう。きようもてふてふが花にとまつてゐる」なんて口にできるくらいの余裕がほしい。

昔の措置制度(行政が福祉サービスの内容を決定する制度)に戻せばケアマネも必要ないし、AIも本当の意味で活きてくるんじゃないだろうか。介護サービスを提供するのは公務員にして地位と給与の保障も与える。でもそのためには消費税を25%くらいにしないといけないだろう。10%にするのも二の足を踏んでいるのに、まあ言はば無理な話でせう。

国は国債という借金に依存している

AIが作り出すケアプランがどんなものなのか気になります。
今後ケアマネの仕事はどうなるのでしょうか?
国は自立支援、自立支援といいますが、国は国債という借金に依存して国を運営していますよね。これ財政的に自立していないんじゃないでしょうか?
そういった意味では国の財政も自立しているかで評価したら?借金が増えたら公務員、国会議員の報酬をカットしてみたら?by 轟(在宅)

これも実にその通り。拍手したくなった。要介護度が改善しないのはケアマネの質が低いから、というのは的を得ていない。でも国の借金が改善しないのは国会議員の質が低いから、というのは的を得ていると思う。

自立状態に改善できるのは0.01%

要介護(支援)状態から更新調査で自立状態になった。はっきり言ってその要因に答えは出にくいです。これほど種々多様なサービスを使い、結果自立状態に改善できるのは0.01%にも届かないでしょう。
殆どは、現状維持又は悪くなりサービスが増える傾向ではないでしょうか。しいて言えば改善の主な要因は医療機関(手術や薬)面に負うている部分ではと思います。
変なインセンティブ制度など検討する必要はありません。by f.s.(在宅

僕もインセンティブ制度(要介護度が改善すると報酬が得られる)には反対だ。老人介護にはそぐわない。それに、要介護度が改善するような人たちは、べつに僕たちが特別なことをしなくても改善する人たちである。

僕が介護職だった時に経験した極端なケースである。要介護5で胃ろう造設者のおばあさんがいた。でも3ヶ月後には胃ろうがとれて完全に口から食べられるようになって要支援に改善。本当は「自立」でもいいんだけれど、なぜか要支援認定がついた感じ。要介護5の認定から3ヶ月で自立認定にするのを介護認定審査会がびびったのかもしれない。

このおばあさんの場合、介護職がとくに自立支援的介護を頑張ったわけではない。もともと回復が見込まれていたケースである。今は胃ろうが必要だけれど、まあ回復するだろう、と。もちろん高齢者だからどんな変化がおこるかはわからない。しかしだいたい予想通り、といった結果を残してくれた人である。

胃ろうを作っている人はたいがいすでに重度の要介護者である場合が多い。特別な病気じゃない場合、普通は生理的な(自然な)嚥下能力の低下が原因である。ベースに脳血管性障害やらパーキンソン症候群やらがあった場合も、本質的には変わらない。自然な嚥下能力の低下だ。

老人介護と攻殻機動隊

これを改善するためには、それこそ映画『攻殻機動隊』みたいな全身義体にでもしなければ無理な話である。しかもあれは脳と脳幹が健康じゃないといけないから、すでにアルツハイマー病や脳血管障害の既往がある人はだめである。

50年後か100年後かわからないが身体を機械パーツに置換できる世界がくれば、また話は違ってくるだろう。というか老人介護の問題などなくなっているかもしれない。なんにしても介護度が改善した場合のインセンティブなんてSFみたいなことは時期尚早であると僕は考えている。そもそも改善という命題は医療を中心にすればよく、介護を中心にすべきものではないと思う。

僕はAIやロボットを目の敵にはしていない

このまえ友人から「なんでそんなに介護ロボットを目の敵にするの?」と聞かれた。僕は別に目の敵にしているつもりはない。便利なものは使えばいいと思う。便利なものを否定していたら、パソコンさえ使えない。今では電動ベッドなしに施設介護が考えられないように、将来的には介護ロボットなしの介護は考えられないようになるだろう。

10年後か20年後かわからないけれど、かならず介護現場と介護ロボットはリンクする。AIにしてもそうだろう。これは別に介護現場が重労働で特別だから、という理由ではない。介護をとりまく世間全体の動きがAIやらロボットやらを取り込んでいく傾向にあるからだ。

そもそも電動車イスだって広義には介護ロボットである。あれは便利なものだと思う。自分で長い距離が歩けなくなった人のまさに足がわりになっていて、僕は支持する。自分で運転できない人にはレンタルしないことになっているから、高齢者が自転車に乗るよりも安全だと思う。

介護の本質は「関係」

しかし僕は介護ロボットが介護職の代わりになるとか、AIがケアマネージャーの代わりになるなんてまったく思わない。ロボットやAIは人が行う仕事の補助にはなるだろうけれど、それらが単体で仕事をすることはない。介護の対象は人である。だから人が介在しないことはありえないのだ。介護の問題は「物量」にあるのではない。

同じ人員基準の老人ホームでもケアのレベルには天と地ほどの差がある。介護の本質は介護者と要介護者との「関係」にある。僕はこの本質的な問題を脇に追いやり、ロボットだのAIだのを議論の俎上に乗せようとする姿勢にNOを言いたいだけなのだ。人がやるべき部分がもっとあるだろう、と思うだけだ。

ケアの価値観や判断の部分は、従来通り人間が間主観的に行いつつ、印象や直感を優先して決める形で問題ない。とういうかそうせざるをえない。AIはその判断に根拠を与えたり、注意を促すサポートとして機能すれば良い。もちろんAIがケアプランを作成しても上手くいかない。それくらい国の頭の良い人たちはよくわかっているはずだ。もしわかっていないなら・・・、それこそAIにとって代わられたらいいのである。

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