施設ケアマネがもつ悩みについて

日は施設ケアプランの作り方 Vol2 「ケアプランは5項目で書ける〜3大介護+レク、医療〜」のワークショップ。なので今日は施設ケアマネについて。家族の中には誰が施設ケアマネかわかっていない人も多いのではないだろうか。

僕にしたところで、1年以上特養で介護職として働いていたが誰が施設ケアマネか最後までわからなかった。サービス担当者会議をいつしているのか不明、ケアプランのサインを家族からもらっている姿も一度も見たことがなかった。とうぜんケアプランなんて一度も読まなかった。嘘みたいだが本当の話である。

施設ケアマネがもつ悩み
社 保 審 - 介 護 給 付 費 分 科 会 第83回(H23.10.31)資料4 
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001tonu-att/2r9852000001tp3g.pdf

ケアマネージャーは100人の利用者に対して1人

法令がさだめる基準では介護保険施設のケアマネージャー(介護支援専門員)の配置は入所者100人に対し1人でいいことになっている。でもこれは最低基準であって、このラインを下回ると罰則がくだるよ、というギリギリの人員配置。福祉の現場では最低基準が標準基準になっているケースが多い。じっさい僕が以前働いていた介護老人保健施設では100人の定員に対し、ケアマネージャーは1人しか配置されていなかった。

大規模と小規模での仕事の違い

施設ではケアマネージャーと他の職種を兼業していることが多い。相談員とケアマネージャー、介護職とケアマネージャーなど。また同じ施設と言っても、100人定員の介護施設と18人定員のフループホームではおのずとケアマネージャーの立ち位置、業務の仕方が大きく異なってくる。大規模施設では、ケアマネ一人ではとても手が足りないので、介護職に役割分担がまわってくる。利用者の担当介護職が生活状況のアセスメントを行い、場合によっては介護計画の素案作りまで行うこともある。

しかし、そもそもケアプランの重要性を理解している人間ばかりではないし、ケアプラン作成の研を介護職向けにしているところはほとんどないのではないかと思う。100人定員くらいの施設になると介護職員も多くいるので、とうぜんながら力量の差が出てくる。

ケアマネ一人の力ではいいケアはできない

一人一人の介護職がしっかり自立していて、アセスメント能力(いまどこに問題があって、どのように関わったらこうなっていくだろうという見通し)を持っていれば、ケアマネはスーパーバイザーとして、介護職が作ったケアプランの足りない部分だけ修正する、または名前だけ貸すといった仕事ができる。こうなるとケアマネは個々の利用者のケアマネジメントから、施設全体を視野にいれたケア体制構築の仕事に注力できる。

しかし大規模施設の場合はこんなふうにできる所は、少数だと思う。ケアマネが残業を重ねて書類作りに追われているほうが多いのではないだろうか?組織が施設ケアマネジメントができる人材を育てないと、ケアマネ個人の力では施設介護のレベルアップは図れない。組織が大きくなれば仕事が分業、専門家されていく。

逆に小さい組織の場合、一人の人間が何役もこなさなければいけない。それが一概に悪いとは思わないが、ユニット型やグループホームなどではケアマネが介護職を兼務していることがほとんどで、負担は大きいと言える。

兼務のメリットとデメリット

兼務のデメリットについては、たとえば介護職兼務なら、普段の介護業務にプラスしてケアマネジメント業務も行わなければいけなくなるので、とうぜん負担が大きい。その施設の介護業務とケアマネジメントにかなり習熟している人間なら話は違うのかもしれないけれど、普通はケアマネジメントのほうがおろそかになるものである。重要度から言えば、目の前のおむつ交換のほうが急がれるからだ。

もちろん兼務にはメリットもある。介護職を兼務した場合、現場の状況や入居者の状況がよくわかるのでケア方法がよく理解できる。それにケアプランに書いたことを自分で実行できる。レクリエーションとして「外食」を入れれば、利用者を外出させやすくなる。僕がショート施設で個別援助計画書(ケアプランと同じ)を作っていたときは、そうやって利用者を外に連れ出す「根拠」を作っていた。

もっと施設ケアマネジメントができる人材を!

ケアマネとして施設で50人以上を担当する場合は、ポイント的に現場に入ることが必要ではないかと思う。例えば、最近入浴が個浴で入るのがむずかしくなってきたとか、飲み込みがうまくいかなくなったが胃ろうにさせたくない、現場でそういう話しがでていれば相談にのり、一緒に考え、時には実践し見本を見せるという具合だ。

ケアマネ資格保持者は増えているので、現在では施設内に資格保持者は数名いると思う。100人に1人のケアマネ配置という状況は無くなっていくだろう。でも資格を持っていてもケアマネジメントができるというわけではない。それとこれとはまた別の問題である。

施設のケアマネージャーは利用者の状態がいまどうなっているのかを十全に把握し、ここをこうしたらこうなるという見通しが立てられるだけの経験を持った人でないとつとまらない(個々の利用者のケアマネジメント)。また、新人職員に対しては指導し、ベテラン職員には自尊心を傷つけずにケアの方向性を導ける能力もいる(施設全体のケアマネジメント)。

ケアマネはタフでなければ生きていけない

現在の介護施設には問題が多い。リーダーシップを発揮し、施設で行う介護の方向性をきちんと示し、なぜこの介護をするかの根拠を説明することができ、職員を陰に日向に育てられる人材が求められている。でもそんなスーパーマンみたいな人はほとんどいない。
施設のケアマネジメント技術を覚えることは誰にでも可能だと思う。でも、じっさいに仕事をするにはその人のキャラクターが多分に影響する。

施設のケアを変えるには自分の気持ちを海の底に深く沈め、かといって冷えて固まらないよう熱いまま保たないといけない時期がある。これはかなり自己コントロール能力を要求されることである。別の言い方をすると、けっこう辛いことである。誰にでもできることではないだろう。

ただひとつ言えることは、施設ではあらゆるスタッフが同じ箱の中にいる。気が合う人もいれば、同じ空気を吸うことが耐えられないと思う人もいる。だからケアマネはタフにならなければ生きていけないし、優しくなければケアマネをしている資格はないのだ。

所属する組織のあり方が問われる

明確な指針・方向性を示し、根拠のある指導ができるスーパーバイザーの存在と、スタッフ一人ひとりの専門性と能力向上、責任ある役割、達成感という満足が得られるような組織の仕組みを作れるかが、個別ケアプランの実行も含めて施設の課題である。いくらタフな人がケアマネをしていても、個人には限界がある。組織がどれだけ個人を認めてくれるかにかかっている。

職場の仕事に満足感があれば人は簡単に辞めない。やりがいを求め、給料が安いのを分かっていてこの業界に入ってきた若い人が、給料が安いうえにやりがいも感じられない、となれば介護業界から離れていくのは当たり前である。離職率の高さがこの現状を証明していると思う。

介護の世界に経済原理は働いていない?

サービスというのは質の良い、もしくは量が多ければそれだけペイは大きくなる。これがわれわれが生きている世界の原則である。ここからはケアマネージャーのみでなく、広く福祉従事者全体に言えることだが、介護の世界ではいくらいい介護をしても、逆に悪い介護をしても受け取る報酬は同じ。もっと極端に言えば、いいケアをして要介護度が下がれば(本人の状態が良くなれば)、収入が減る。逆に悪いケアをして要介護度が上がれば(本人の状態が悪くなれば)、収入としての介護報酬が上がる。

「競争原理が働くことで介護の質が上がる」。介護保険を導入するときにそう厚生労働省は言た。しかし、もともとが上に書いたような矛盾したシステムの中に我われはいるわけである。その矛盾を最近国は要介護度が改善すればインセンティブを出すと言うようになった。でも急死しないかぎり年をとれば要介護度は上がっていくのである。

僕はそこにインセンティブという考え方の限界をみるのだが、はたしてこのようなシステムで競争が起きたら、どうなるのか?いまだ自立支援という共有概念をもたない中で、余計な混乱が深まるのではないだろうか。競争原理というのは医療、教育、社会福祉の世界に共通する難しい問題である。

介護の評価は難しい

介護というのは介護する側の人生観、介護観、つまり主観で良い介護か悪い介護かが決まる。介護を受ける側は、弱い立場に立たされているので、なかなか良い悪いの評価を訴えられない。それにもともとが数値化が困難な領域なので、客観的に評価することは難しい。

ケアプランは目標を設定し、それを一定期間後に評価することとなっている。ケアマネジメントそのものについては、理論は完成されていると言われているが、理論はあくまで理論である。それを現実世界で活用できているケアマネージャーは多くはないと思う。僕にしたって活用できている実感はもてなかった。

在宅介護の場合、介護サービスは本人の生活の一部を支えるものだが、施設介護の場合は閉じた空間の中で24時間の介護が提供されている。だからこそ充実した濃厚な介護ができるという人もいるが、見方によっては非常に危険をはらんだ世界である。

ケアによって、その老人の晩年の良し悪しが決まると言っても過言ではない。ケアの内容そのもので老人の生活が決まる。ケアマネージャーはそういった意味で非常にチャレンジドな職種だと思う。そんなことをいろいろ考えると、僕には施設ケアマネの実務はとてもつとまらないな、と思うのである。

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