複雑怪奇なケアプランの迷宮へようこそ

し前にAI(人工知能)にケアプランを作らせるというニュースがあった。ケアマネからの感想はさまざま。上記リンク先のケアマネタイムスの記事から一部引用。

AIだろうが何だろうが、機械にできるもんならやってみろ!
一人ひとりの特性に応じたプランができるようなものでなければ意味がない。機会にそんな融通が利くのか?ぜひ創り上げたプランを見てみたい! by 兼任CM(在宅)

AIには、ケアプランの原案が作れても、傾聴や相談や調整はできない。施設ケアプラン通りにケアを実践してもらうこともできない。
共感ができないから。 by 志舫

要支援者、軽度者で自立への意欲の高い人にはいいプランができるかもしれないが認知症の進行している人、自立への意欲が低い人には難しいかも
ケアマネがプラン作成で悩まされるご利用者さんにはAIも対応できないと思います。 by がたろう(在宅)



と、予想通り否定的なコメントが多かった。バランスをとるために以下のようなコメントも引用。

どんなケアプランが出てくるのか、久々に楽しみでワクワクします!
ケアプラン作成って本当に答えのない作業です。
みなさんが書いておられるとおり、1人ひとりの人生や価値観、心身の状態、環境などなど色々な側面から話し合い、今生きていくことを中心によりよい支援を考え、納得できるよう導き出していくしかありません。
それがAIでは何らかの情報を元に一つの答えが導き出される。
どんなものなのかは予想もつきませんが、自分の考えや想像できる範囲とは別の世界が広がるとすれば利用者にとっても選択枝が増えることになりますし、ケアマネにとっても一つの方針を提示するいい機会だと思います。
介護の見守りや傾聴のロボット等よりは現実的かなと思ってます。  by めろんろん(在宅)


僕の性格が悪いからか、最後のコメントはどこに皮肉が含まれているんだろう?と探ってしまった。僕なんかは見守り(監視)ロボットのほうが現実的かなと思うのだけれど、世の中にはいろんな意見がある。

僕が気になったのはAIケアプランは施設と在宅(居宅)のどちらに適用させるのだろう?ということだ。それで少し調べたのだが、けっきょくわからなかった。雰囲気的には居宅向けだと感じるのだが、知っている人がいたら教えてください。

AIの前にケアプランとはなんぞや?
ケアプランを細かくみていくとけっこう(というかかなり)複雑である。エッシャーのだまし絵みたいに、複雑怪奇な迷宮に足を踏み込んだような感覚がある。階段をのぼっているのかおりているのか見分けがつかなくなる。介護職でも正確に理解している人は少ないのではないか。

まずケアプランは「施設」と「居宅」の2種類に分けられる。それぞれの正式名称は「施設サービス計画書」、「居宅サービス計画書」である。この両者は同じ書式である。名称だけが違う。この書式は国が標準様式として出しているが、必要事項が記載されていれば他の書式を作成し使うこともできる。標準書式は分かりにくく、僕はケアプランが誰にも読まれないのは、半分はこの書式のせいだと考えている。だからもっと分かりやすいものに変更した方が良いと思っているのだが、そんな色気を出すと監査で目をつけられる。よってどこもこの書式しか使っていない(のだと思う)。

実は施設サービス計画書は全部で6枚、居宅サービス計画書は8枚で構成されている。8枚全部の画像を貼ると日曜日のなんばグランド花月みたいにくどくなりすぎるので、最初の2枚のみを貼り付けた。一部切れているのはご愛嬌。


スクリーンショット 2017-04-28 5


スクリーンショット 2017-04-28 5


ケアプランと言えば普通この2枚だけを想像するが、実はそうではなかったりする。AIが「ケアプラン」を作成するというけれど、どこまでなのだろうか?興味しんしんである(嘘)。以下、第8票まで解説。

第1票 居宅(施設)サービス計画書(1)
第2票 居宅(施設)サービス計画書(2)
第3票 週間サービス計画表(日課計画表)
第4票 サービス担当者会議の要点
第5票 サービス担当者に対する照会(依頼)内容
第6票 居宅(施設)介護経過
第7票 サービス利用票
第8票 サービス利用票別票

居宅ケアマネはサービス調整が大変
第1票と2票については別の回で詳しく書く予定なのでここでは割愛。さらに以下から、主に居宅サービス計画書について書くことを断っておく。施設と居宅をまぜて書いてみたけれど、わけがわからなくなってしまったので。

さて第3票から。施設の場合、週間サービス計画書か、日課計画表のどちらかでよい。要は1週間単位か1日単位で起床時間、食事時間、レクへの参加の予定を書くだけである。居宅の場合、訪問介護やデイサービスの利用日とその活動時間帯を記載する。

一般的に要介護度が高いほど、多種のサービスが必要になり、利用回数も多くなる。すると同じ訪問介護サービスでも人員の問題などで事業所1箇所では対応できず、2箇所とか3箇所に依頼することになる。デイサービスを2箇所利用している人もいるし、ショートステイも部屋の空きがなく複数の施設に依頼、なんてのもざらである。福祉用具レンタルにいたっては、ベッドと車椅子で業者が違うなんて場合もある。

居宅のケアマネはこの調整が大変である。また例えば訪問介護事業所でも、融通をきいてくれるところもあればまったくきいてくれないところもある。加算をたくさんとっているところもあれば、ほとんどとっていないところもある(負担上限額がギリギリの場合重要)。
そしてけっこう大事な要素が相性である。利用者との相性を第一に考えるが、次に自分(ケアマネ)との相性も考える。言うまでもないが、相性を考えるときは100%勘である。

居宅ケアマネが施設ケアマネと決定的に違うのはこの点だろう。施設は内部に介護資源が一通りパッケージ化されている。足すものもなければとくに引くものもない。そのため相性が合わないとなかなか辛い。

ケアプランの違い


サービス担当者会議と困った利用者
ケア(サービス)の内容を変更するとサービス担当者会議というものを開催しなければならない。この会議は原則として利用者、ケアマネ、各事業所の担当者1名が参加し、ケアの方向性を確認しあうミーティングである。第4票にはこの内容を記載する。サービス種類をたくさん利用している人の場合は内容をまとめるのが大変である。

さらに問題なのが「嫌がらせ?」と思うほど、頻繁にサービス内容の変更要求をかけてくる輩がいることだ。要望が多く、しかも後からサービスの種類や回数を増やして(あるいは減らして)欲しいと言ってくる利用者がたまにいる。

サービス内容が一つでも変わると、書類を作成し直し、全員を再度担当者会議に呼ばなければならない。例えば訪問介護で掃除のみのサービス内容だったのが、買い物支援も必要になったとする。変更するのは訪問介護のみなのに、デイも訪問看護も訪問入浴も福祉用具も利用している全てのサービス事業所に声をかけることになる。回数を増やしたり、減らしたりする場合も(それが一時的なものでない限り)開催しなければならない。

利用しているサービス事業所が多いほど、一つずれると、他のすべての事業所に連絡し、日程の調整をかけてもらわないといけない。1回や2回ならまだしも何度も要求されるとこちらもキレそうになる。もちろん基本的にケアマネが専門的な視点でサービス種と回数を決めることになっているのだが、そんな論理が通用しない利用者がいるのだ。こうなるともう駆け引きの世界である。介護の専門的知識など役に立たない。どれだけ修羅場をくぐり抜けてきたかの問題になる。

そうなると利用者のほうが上手なことが多い。なにせ自分の倍かそれ以上生きてきた人生の猛者である。で、駆け引きに負けると悲惨な目をみる。回数を増やすためにサービス事業所に電話すると、「その日は人がいなくてどうしても入れないんですよ」とか言われる。仕方なく必死で新しい事業所を探し、担当者会議を開きなおすはめになる。サービス内容に直接変更のない事業所の人にとっては、「え?担当者会議?1週間前にもやったよね?」ってな具合である。

で、あまり意味のない担当者会議に出席したくない人は、「その日は他の利用者の担当者会議の先約があり、参加できません」と返事をよこしてくる。その場合は第5票のサービス担当者に対する照会(依頼)内容にその理由とサービス内容についての意見を記載した書類を送ってもらう。

記録と利用票の作成
第6票にはそういったもろもろの経過を記録していく。本人・家族からの相談内容、サービス事業所からの連絡内容、主治医や他機関との連絡・報告内容、月1回の利用者宅への定期訪問時の記録などだ。

最後に第7&8票。最後に回されているけれど、けっこう重要である。第7票には在宅介護サービスの種類、利用回数が、そして8票には利用料金の明細が記載されている。ケアマネは利用者にサービス内容を確認してもらうため、利用票(第7票)にハンコをもらう義務がある。サービス内容に変更がなければ月1回の定期訪問時に来月分を持っていく。変更があればその都度である。ケアマネも面倒くさいが、利用者側もそうとう面倒くさいと思う。

個別援助計画書という名前のケアプランも
さらに在宅介護サービスにはケアプランが枝分かれして存在する。まず担当のケアマネージャーが作る居宅サービス計画書が大本のケアプランである。居宅サービス計画書には、利用者がそのサービスを必要とする理由が書かれていればよい(というか書かれていなくてはならない)。なぜ訪問介護が(あるいはデイが、福祉用具が)必要なのかという理由だ。サービス内容の具体的方法について記載する必要はない。その役割は各サービス事業所が担っている。それを個別援助計画書と呼ぶ。つまり各事業所ごとのケアプランである。居宅ケアマネが作るものを全体援助計画書と呼べば(こんな言葉はないが)、個別援助計画書の位置どりが理解しやすいかもしれない。

利用している事業所の数だけ契約書と個別援助計画書が必要になるので、利用者はサイン漬けにされる。なにがなんだかわからずにサインしまくっているのではないかと想像するのだが、たぶん当たっていると思う。しかもサービス種別によっては個別援助計画書を作成しなくてもよかったり、利用日数によって作成の有無が決まったりする。素人には理解不能の世界である。僕もときどき理解不能になる。

個別援助計画書の書式は自由だが、盛り込むべき項目は決められている。中身についても似たり寄ったりになりやすい。もちろん中にはよく考え込まれた計画書もある。よくここまで利用者の個性とその生活のことを理解しているなあと感心するものもある。真面目なケアマネはこの個別援助計画書の内容もフィードバックし、次回のケアプランに反映させている。

迷宮のさらに奥へ、は進まない
ケアプランの迷宮はさらに奥へと続いているのだが、書き手の気力が続かないのでこれ以上は進まないことにする。書いていてだんだんクレージーな気分になってくる。

最後に付け加えると、上に書いたケアプランの説明は要介護の人のものである。どれくらいの介護が必要か決める介護認定には要介護(重め)と要支援(軽め)の2種類がある。

要支援の人には別に介護予防サービス・支援計画書という名称のケアプランが存在する。作成する考え方としては要介護と基本的に同じなのだが、①書式が違う、②サービス利用上のルールがじゃっかん異なる、③料金体系も要介護とは異なる、④その他もろもろ違いがある(けっこう違うな)。実務に携わっていないととてもじゃないが理解できない。

さらにさらに今年度から介護予防・日常生活支援総合事業というまたわけのわからない名前の制度が始まり、要支援認定を受けなくても訪問介護やデイサービスの利用が可能になる。この制度の利用者にはケアプラン作成、サービス担当者会議の開催、利用料金について、また別体系の細かいルールが新たに設定された。いったいどこのアホがここまで複雑にしたのか。やってられるか。

ということで結論。人工知能ごときにこんな複雑なことが担えるのであれば、ケアプランのAI作成は大歓迎。でもたぶんできないので余計なことはするな、と言いたい。

やれやれ。こんなありふれた結論を出すためにこんな文章を書いて1日を使ってしまった。こんなことならAIに執筆してもらったほうが楽だったなあ。

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