『新たな医療の在り方を踏まえた・・・報告書』の気になる所

識者というのはあまり文章能力がなくてもつとまるものなのだろうか?という疑問をもった。

元ネタは以下のケアマネタイムスの記事から。

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介護職員の医療的ケア拡大、再び争点へ 有識者会議が提言 「業務分担の最適化を」

介護は科学的に裏付けられていないのか?
この記事は読んでいただくとして、この新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会報告書をつらつらとながめて気になったのが以下のページの文章。

43P 科学的に裏付けられた介護の具現化の項目

僕はタイトルの科学的に裏付けられた、というところにまずひっかかった。現在の介護は科学的ではないということだろうか?これまでの竹内孝仁(最近の理論はちょっとどうかと思うが)や三好春樹などの著作を読めば、十分に生理学などの根拠にのっとったケア方法が提示されていると思う。

しかし介護は直接的に人間を対象としたものである。言うまでもなく科学だけでは推し量れないものがある。たまたま現代が科学信奉の時代であって、100年後か200年後には魔法が信じられているかもしれないのだ。

まあ魔法は冗談としても、医療はヒポクラテスの時代から考えれば数千年の歴史があるわけだが、「根拠に基づく医療(EBM)」なんてものを持ち出してきたのはごく最近のことである。勘と経験に頼っていた自分たちの影を振り払いたくて、介護にまで科学を信奉させようとしているのかもしれない。

おかしい文章がちらほら
そもそもこの報告書は内容の前に文章があまりにもお粗末である。例えば以下の文章を読んでもらいたい。一読して意味がわかった人は非常に頭の良い人だと思う。僕は3回ほど読んでみたが、それでも何を言いたいのかよくわからなかった。

平成21年度以降、介護サービスの質の評価に関する調査研究が重ねられているが、利用者の状態把握のためのデータ項目の特定、プロセス管理の視点の整理とともに、国際生活機能分類(ICF)のうち、心身機能・構造にとどまらず、利用者のQOL向上の観点から主観的な側面も含めたアウトカム評価の在り方について、例えば、まずは「自立支援」等から検討が深められ、具体化されるべきである。 43P 科学的に裏付けられた介護の具現化の項目

どうです?わかりました?僕が思うに、この文章はまずAさんが最低限必要な主語(ICF、QOL向上、アウトカム、自立支援など)を置き、それにBさんが述語と目的語を書き足し、そのうえでさらにCさんが補語を付け足して一通りの文章になるように仕上げたものではないか。つまりちょっとまともとは言えない文章ということである。

僕なりに上記の文章を理解すべく、以下のように分けてみた。

①平成 21年度以降、介護サービスの質の評価に関する調査研究が重ねられている。
②利用者の状態把握のためのデータ項目の特定、プロセス管理の視点の整理が必要。
③国際生活機能分類(ICF)のうち、心身機能・構造にとどまらず、主観的な側面も含めたアウトカム評価の在り方について、具体化されるべき。
④その中でもまず利用者のQOL向上の観点から「自立支援」の検討が深められるべき。

分けたはいいが、何が言いたいのかさらにわからなくなってしまった。とくに③。心身機能・構造ばかりで評価せず、本人の主観的な評価の在り方も大事にしようということなのだろうが、どうやって主観的なものを評価するのだろう?

また④の「自立支援」をどう定義するかには触れられていない。そういった疑問点を(確信犯だと思うのだけれど)華麗にスルーしてこの文章は作られている。だからまったく頭に入ってこない。

ケアマネジメントにAI
続いて以下の文章もよくわからない。要はAI導入を正当化したいのだろうが、つじつまがあわない。

個別性が高く、多様化・複雑化するニーズに対応しつつ、よりケアマネジメントの質を高め、介護サービスの利用者にとっての価値を向上させるため、ケアプランの作成については将来的には AIなども活用して最適化を進め、将来的にはアウトカムに基づく評価につなげることが求められる。 43P 科学的に裏付けられた介護の具現化の項目

個別性・多様化・複雑化するニーズに対応するためにはケアマネジメントするのは人間でないとつとまらないはずである。なぜここで人工知能がでてくるのか?
また文章的にも「ケアプランの作成については将来的にはAIなども活用して最適化を進め、将来的にはアウトカムに基づく・・・」とあって、「将来的には」という言葉をこの短い間隔で2度も置く必要があるのか?と思った。

僕が気にしすぎなのかもしれないが、こういうのが気になるとまともに文章が読めなくなる。あと「アウトカム」という言葉もよく使われている。僕なんかはアウトはわかるけど、カムってなんだろう?と思ってしまう。

もちろん文脈からなんとなくわかるのだけれど、日本語で「結果」とか「成果」と書いていてくれたほうが余計な脳内メモリを使わなくてすむのにと思う。日本語の概念にうまくあうものがなく、そのまま外来語を使う例はあるだろう。でも読む側のことも少しは考えろよ、と思う。

などなど内容だけでなく、その文章表現も気になった。

結論有りき、ではないか?
この検討会の構成員を見ると、大学の教授とか病院の理事長とか院長、看護師である。介護関係職種はほとんどいないか、まったくいないと思う。彼らがこの文章を書いたのか、省内の誰かが文章にまとめたのかは知らない。

この報告書は主に医療分野についてのものだが、こと介護に関して言及されている部分はひどい内容だと僕は感じた。初めから結論有りきで本当に検討したのか?という印象だ。

全体的にみれば介護に言及している割合は少ない。主に医療者についての報告書なので、あまり目くじらたてるものではないかもしれない。けれども厚生労働省という国家機関に提出され、それをもとに何かしらの政策がきまっていくと考えると、介護職にとってあまりメリット、じゃない利益はないのでは?と僕は思うのである。

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