今日はいきなりアセスメントの話

夫になる前から僕はけっこうイクメンだった。こういう言葉を使うのは恥ずかしい。イクメンだって。誰がこんな言葉作ったんだろ。

上の子どもが生まれたとき僕は現役の介護職だった。家の外ではジジババの介護、家の中では赤ちゃんの世話。子どもが生まれるまでは、赤ちゃんなんてお乳を飲ませて適当にあやしていればいいと思っていた。しかしじっさいにやってみると老人の介護よりも数倍大変だった。寝たきりのうちはまだいいのだが、歩けるようになると地獄である。一瞬も目が離せない。

全介助で認知機能が極めて低く、言語によるコミュニケーションもとれないのに徘徊する。昼夜逆転、奇声を発する、感情が不安定、なんでも異食する。介護度でいうと間違いなく要介護5を超えていたと思う。あまり思い出したくないからこれ以上書かないけれど。

まあそんなこんなで大変だったわけだが、老人、乳児いずれのケアでも中心になったのは3つだった。食事、排泄、入浴。これだけ。とくに施設介護でやることといえばこの3つを中心にして業務がまわっていく。

施設入所=重度な介護が必要な老人である。介護の専門性が如実に出てくる場所だ。介護が必要なお年寄りにどう食べてもらい、どう出してもらい、どう入ってもらうかを追求する。これが介護職の仕事である。

在宅介護と施設介護でアセスメントの視点はやや異なるが、それでもけっきょくこの食事、排泄、入浴の3つに収斂していくと思っている。

ここでいきなりアセスメントの話
要介護老人のアセスメント(情報収集と分析)は食事、排泄、入浴に絞って考える。世の中には腐るほどアセスメントシートが存在し、その多くが膨大な数の項目で成り立っている。ADL(日常毎日行う生活行為)とIADL(買い物、掃除などのADLよりも複雑な行為)、そして身体・精神状態、はては家族構成や緊急連絡先、生活歴まで含めるものもある。盛りすぎである。本人の基本情報の記入は別にフェースシートでやれと。

一見して何がどこに書かれていて、それがどう繋がっているのかぜんぜん分からない。こういうのは作り手の自慰行為、狭い世界での自己満足である。ああいうのは本当にやめてほしい。現実の仕事には役に立たない。僕たちが求めているのは、短時間に必要な情報が整理でき、ぎりぎり必要な情報がシンプルに書き込まれたシートなのだ。パッとみて重要なことが理解できるものが欲しいのだ。

介護職全員が丁寧に文章を読み込むような人たちばかりではない。そう、介護の現場はおばちゃんたちの力で成り立っているのだ。その現実をアセスメントシートを作る人間は忘れているのか、それとも無視しているのか。あるいは単なる自慰行為・・・、それはもういい。

ひと一人の情報である。いくら介護という断片しかとりあげないとしても、それなりの量になってしまうのは仕方ない。それは認める。だが、それでも世の中に出回っているアセスメントシートは無駄な項目が多いと思う。読む側の都合を軽視しすぎである。たとえばIADLの項目にいたってはわざわざ細かく設定する必要はないと僕は考える。

以下に介護業界で参考にされるアセスメントシートをいくつかとりあげた。リンクも貼っているので興味があり、ちょっと見てみたいという人はどうぞ。細かいところに違いはあれど、どれも使い手のことを考えていないことが共通している。

課題分析票(アセスメントシート)いろいろ
「ケアマネジメント実践記録様式」
https://www.jacsw.or.jp/14_shuppan/files/careVer4.pdf

日本社会福祉士会作成。リンク先の書類をみてもらえればわかるけれど、アセスメントシートが19ページにものぼる。このすべてに記入する必要はないのだが、いちおうひとまとまりのシートとして作成されている。これを作った人たちは、こんな分量が利用者のケースファイルに入るか疑問に思わなかったのだろうか?ケースファイルには他にもいろいろな書類があるのだけれど。

百歩譲って、アセスメントをすみからすみまでするとこれくらいの項目数になりますよ、という教示として作ったのなら話がわかる。いわばテキストである。テキストは実戦では役に立たない。極論すれば学校の勉強というのは役に立たないことを覚える作業である。だからテキストを勉強するのはちゃんと意味がある。一つの基準点を作るという意味で。これはテキストとしてのアセスメントシートですよ、実戦には役に立ちませんよ、とちゃんと明示してくれれば僕も賛同できるのだが。

「居宅サービス計画ガイドライン」
http://www.shakyo.or.jp/news/20140131.pdf

こちらは全国社会福祉協議会のもの。認定調査の項目にそって作成されているが、認定調査票は役所に申請すれば交付されるし、ほとんどのケアマネは手元に取り寄せている。なぜわざわざ認定調査の内容を転記するようなことをしなければいけないのかが謎である。認定調査票をそのままみればことがすむはずである。調査票にない項目のみで作成すればもっとすっきりしたはずだ。

「財団方式」
http://www.jvnf.or.jp/jac-ltc/jac_ltc2.html

日本訪問看護財団のもの。こちらはネットには詳しい様式が載っていなかったのでわかる範囲で。こちらも非常に項目数が多い。14票まであり、在宅では325項目、施設でさえ281項目もある。すべての項目の情報をとり、それを分析するのにいったい何日かかるのか。現場では次々と新規利用者がやってくる。やれるわけがない。
医療職(看護師)が作っただけあって問題領域を分割し、分析していく傾向がはっきりあらわれている。でも介護の場合、全体としてみたほうが問題の所在がなんとなくわかる、という傾向をもっていると思う。

問題を細かく分割しすぎではないか
これまで見てきたアセスメントシートは非常に意識的、ロゴス(論理、説明、意味、理由)的なものだ。僕はここに不満を覚える。介護の手順は均一化できない。工場のベルトコンベヤーの上でまったく同じ工程が繰り返されるようにはならない。それが人対人の仕事の特徴である。

同じような条件をあたえても結果が同じとは限らない。当たり前のことなのだが、科学主義に支配された現代人はこれをなかなか認められない。自分たちが信じてきた地盤を壊されそうで怖いのだと思う。

でも科学で自然をすべて記述できるわけじゃない。だったらそのことを認めてしまえばいいのに、と僕なんかは思うのだけれど。

あくまでも実践者としてアセスメントシート(課題分析のためのツール)を使うなら、次の5項目だけで足りると僕は考える。

つまり介護で一番大事な3つの「食事」、「排泄」、「入浴」。そしてあと2つの追加項目として「余暇活動(レク)」、「医療・看護」である。

長くなったのでここまで。続きは年明けで。

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