世界の介護事情。ドイツにおける介護の概要

世界で初めて介護保険を創設したドイツ

今回は日本の介護保険がお手本にしたドイツをみてみることにします。
ドイツの人口は約8200万人。高齢化率は約21%です。2030年には29%、2050年には33%と超高齢化社会になることが予想されています。世界で初めて介護保険を創設したのがドイツです。ドイツはもっとも早く疾病保険を創設した国でもあり、日本の介護保険はドイツの介護保険を参考にして作られたのは周知のことです。1995年から導入されました。

日本の介護保険は原則65歳の高齢者を対象にしていますが、ドイツの介護保険は0歳から適用されます。とはいっても、実際に給付金を受ける8割は60歳以上ということで、高齢者を中心としたものであることにかわりはないようです。

日本の介護保険は税金も財源になっていますが、ドイツの介護保険は保険料だけを財源として運営されています。ドイツでも日本と同じように要介護度が設定されており、認定を受ける仕組みになっています。ドイツの要介護度は0度、1度、2度、3度の4段階しかありません。

このように日本の7段階に比べれば段階が少なく設定されており、また日本で中度以上の介護を要する人からしか実際のサービスの給付がされないという特徴があります。完全に符号するわけではないですが、最重度の3度が日本の要介護5に相当します。24時間の介護が必要な人が対象です。2度が要介護4、1度が要介護3程度というところでしょうか。0度はそれよりももっと軽度な人ということになります。ほかには家庭で介護している介護者への金銭給付があることも日本とは異なっており、細かく見ていくと日本とはずいぶん違う仕組みになっています。

ドイツの介護保険の特徴は?

ドイツの介護保険にはどのような特徴があるのでしょうか。ドイツの介護保険の給付内容を見てみると、大きく3種類に大別されます。(1)在宅介護、(2)部分入所介護(デイケア、ナイトケア)及び短期介護(ショートステイ)、(3)終日入所介護(介護ホームへの入所)です。

利用時には日本のようにサービス利用時の一割負担の負担金はありませんが、給付額がそれほど多いわけではありませんので、あくまでも補助という位置づけです。物価の違いがあるため単純な比較はできませんが、ドイツでは1度に認定された人が受けられる在宅介護サービス費は日本円で約5万円。1度が日本の要介護3と仮定すると、要介護3の区分支給限度額は単純に計算して約27万円。金額だけをみるとずいぶんな差です。

日本と一番違う点としては、現金給付(介護手当)があることです。この現金給付と現物給付のどちらかを選択したり、二つを組み合わせて受給することも認められています。ドイツの1度の人の介護者が受けられる現金給付は日本円で約2万6千円。これも単純に比較はできませんが、それほど多い金額ではないといえるでしょう。

他には在宅介護のための10日間の有給休暇が認められていたり、雇用主の大小にかかわらず、6ヶ月の介護特別休職制度が利用できます。ただし、この6ヶ月の間は無給です。

ドイツでは外国人介護士が定着していて、外国人介護士を利用する場合、同じドイツ人の介護士よりも費用が割安になっている点です。この背景には2005年に新移民法が制定されたのが大きく影響しており、介護分野への外国人の受け入れが容易になったことがあげられます。ドイツの隣国のポーランドでは学校でドイツ語を習得している人が多く、介護士や看護師の受け入れについて、語学的なハードルが低いのです。

さらに、利用者自身がポーランドやスロバキアなどの介護施設に入るという選択肢も用意されています。その場合、ドイツの介護保険が利用できるようになっています。ドイツ国内の介護施設だと利用負担が重く、海外の割安な費用で入所できる介護ホームを選択する動きがあります。

介護保険の問題点

ドイツの介護保険制度の問題点をあげてみましょう。まず第一に、日本と比べて要介護認定が非常に厳しいということです。日本でもじょじょに要介護認定が厳しくなってきていますが、ドイツではスタート地点から違います。要介護3程度の中度者からでないと認定を受けられないという事情があるからです。

また保険給付される介護費用の給付額が少ないという点があげられます。給付される保険料は、介護度や要介護者の生活場所などにより違います。しかし例えば要介護3度の人に対する給付金が月額約17〜18万円程度です。月額30万円の施設に入所するとなると、差額の13〜14万円を毎月本人か、もしくはその家族が負担することになります。

ドイツでは介護施設の利用料金が高く、支払えない人が在宅介護を選択するケースが増えているようです。日本の介護保険施設でも個室を選択すると、月額15万円程度の負担になる場合がありますが、特別養護老人ホームの多床室なら10万円を切る料金で利用できます。日本で施設入所希望者が多いのは在宅よりも安い費用で介護が受けられるという側面もあります。

要介護認定がないと当然介護保険のサービスが受けられませんが、ドイツでは介護保険外のサービスについてはほとんど整備されていないと言われています。それは結果として家族が無償で介護せざるをえない状況にあるということです。先の見えない介護だけに、金銭的負担も精神的負担も大きくのしかかる介護問題をドイツも抱えています。

ドイツの介護職の未来は?

日本の介護職の平均月収は他産業従事者と比べ低いですが、ドイツでも同じようです。ドイツでは介護職と看護職の養成機関の履修年限を3年と同様にし、給与格差が生じない施策を制定しました。しかし、看護職よりも介護職のほうの収入が低い現実が続いています。そのため、やはり男性の介護職の成り手が少なく、シフト勤務のため女性にとっても家庭生活とのバランスを保つのが難しく、魅力的な職業とは言いがたい現実にあるようです。

ドイツには兵役義務があったのですが、それが2011年に廃止になりました。兵役につくのを拒否する男性には代替役務として老人ホームや病院などで役務につくことが義務付けられていました。しかし兵役義務が廃止になったことで、この代替役務につく義務もなくなり、ますます介護者が不足する事態になっています。

ドイツも日本と同様に、このペースで要介護者が増加すれば、深刻な介護職の不足が問題になります。ドイツの介護サービスの財源は純粋に保険料だけですので、介護サービスの質、量ともに拡充しようとすればそれはダイレクトに保険料の上昇につながります。それを国民がどのように受け止めるかで、今後のドイツの介護の方向性が決まっていくことになるでしょう。

介護は社会保障の一部であり、医療や年金などの他の社会保障サービスとの兼ね合いも考えなければいけません。介護保険の先輩であるドイツと、日本の介護保険の未来が今後どのような方向性をたどることになるのか、比較検証していく意義があると思います。